プレゼントを強引に渡す
幼馴染の百くんはいつも少しだけ意地悪だ。
小学生の時は隣の男子に消しゴムを貸そうとしたら取られた。
中学生の時には他の男子と一緒になって、ことあるごとに揶揄ってきた。
流石に高校生になって(高校も同じ所に行くことになった。)そんな露骨な意地悪はしなくなったが、目が合うのに無視され、話すこともなくなった。
何が気に食わなかったのか、今となっては全く分からない。
私は彼の事が好きだったからそれなりにショックだった。
大学は流石に違う所に行くことになり、生活リズムも異なったせいか、家が近いというのに滅多に会う事は無くなり、いつしか百くんの事は昔の事として頭の片隅に追いやった。
そんな私も社会人となって三年目。
結婚一次ブームというのだろうか、次々と周りの子達が結婚をし始めていった。
私は別にまだ良いと思っていたが、同僚はそうでもないようだ。ある日の仕事帰りに呼び止められ、そのまま所謂合コンというやつに連れて行かれた。
「私こういうの好きじゃないって言ってたじゃん。」
「えー、たまには良いじゃん。ほら、今回イケメンばっかりだよ。」
隣に座った同僚に小声で訴えるもどこ吹く風。しかし同僚の言う通り、確かに今回のメンバーは全員イケメンだった。
同僚は目の前にいる褐色の肌をした男の人、鯉登さんにがっつり狙いを定めて場を盛り上げていた。
他の子もそれぞれ良いと思う人がいたのか、私は必然的に一人で目の前の食事を楽しむことになった。
そんな私の様子に気がついたのか、口の横にホクロがある男の人、宇佐美さんが少し申し訳なさそうな顔をして言った。
「ごめんね。もう一人来るんだけどちょっと遅れてて。」
どうやらもう一人は定時前に急にアクシデントが起きたようで、それを片付けてから来るとのことだった。
「元々そいつ乗り気じゃなかったんだけどね。みんなの写真貰ったからソイツにもダメ元で見せたら急に行くって言い出して。」
顔に大きな傷がある男の人、杉元さんがそう言った。
写真ってなんのこと?と隣をジロリと睨むと、どうやら私の了承無しに写真を送ったらしい。変な顔をしていなかったから良かったが、勝手に人の写真を見せるのはやめて欲しい。
ここまで来てしまったら仕方ない。少しヤケになりながらお皿に乗った唐揚げを頬張った時だった。
「すまない、遅れた。」
どうやらあと一人のお出ましのようだ。
すでに席は決まっていて、空いているのは私の目の前。さすがに社会人として無視する訳にもいかず、愛想笑いでもいいから挨拶はしておかないとなと顔をあげたその時だった。
「…っ!!」
「?夢野どうしたの?もしかして知り合い?」
特徴的な眉毛に瞳。頬にある大きな縫合痕は記憶にないものだったが、間違いなく百くんだった。
「ううん、いや、知らない。」
「そ?」
思わず否定してしまった。百くんは絶対私に気付いているはずだっが、何故か話を合わせてくれた。
「ははぁ、俺もこんな可愛い人が知り合いだったら今頃ここにはいないんですけどね。」
あ、遅くなりましたが尾形です、とわざとらしいくらい爽やかな笑顔で挨拶をする。それだけで女性陣は一気に百くんに興味を持ったみたい。
確かに百くんは昔から何だかんだでモテていた。
個性的な面持ちと、絶対本心から思っていないような甘ったるい言葉で女の子を誑かしてたっけ。
全員揃ったということで席替えをし、運良く私は百くんとは一番離れたところに座ることになった。
隣になったのは鯉登くん。彼とは趣味の海釣りの話で盛り上がった。鯉登くんは船を持っているということで、今度乗せてもらう約束をした。
連絡先を交換したところでお開きの時間になり、お会計を済ませ、解散となった。
百くんとは最初以外話すことはなかった。
気になる子がいたという事だから、この後誰かと二軒目なんて行くのだろうと考えたら、モヤモヤした。私は家直行ですけど、と少し不貞腐れた気持ちで駅まで行こうとしたら肩を抱かれた。
何?強引なナンパか?と思って相手の顔を見るとそこにいたのは百くんだった。
「夢野ちゃんよ、知らんぷりして帰るのかよ。」
「ひゃ、っ」
いきなり耳元で囁かれ、思わず変な声が出てしまった。
カァと顔と耳に熱が集まり、咄嗟に耳を抑えて距離を取る。
「……へー。お前、結構イイ声出すんだな。」
「な!」
久しぶりに会うと言うのに今も昔と意地悪なのは変わらない。いや、大人になった分タチが悪い。
「もう、なんなの!」
こちらは怒ってると言うのに、百くんは随分と機嫌が良さそうだ。再び私の肩を抱き、駅まで向かう。
あれ?二軒目行くんじゃなかったの?
「元気にしてたか?」
「…うん。百くんは?」
「変わらん。」
近況報告、と言うのだろうか。距離を探り合う会話をしながら歩いていると百くんは突然脈絡もなく言ったのだ。
「今日はお前が来るって聞いたから来た。でなきゃこんな面倒な所には行かねえ。」
「……それってどう言う意味?」
「もうイイ大人なんだ。意味なんて分かんだろ。」
それでもちゃんと聞きたいんだとジッと目を見つめてやると、ははぁと乾いたように笑った。笑い方は変わらないな、と思っていたらポケットのスマホが震えた。
急ぎの連絡かもしれないと取り出すと鯉登さんからだった。メッセージが見えたようで、少しだけ肩に置かれた手に力が入ったのが分かった。
「気が変わった。じっくりねっとり教えてやる。」
そのまま有無を言わさず、百くんの自宅に連れていかれたのは言うまでもない。
「そういえば今日俺の誕生日だったな。
……いいプレゼント貰ったよ。」
小学生の時は隣の男子に消しゴムを貸そうとしたら取られた。
中学生の時には他の男子と一緒になって、ことあるごとに揶揄ってきた。
流石に高校生になって(高校も同じ所に行くことになった。)そんな露骨な意地悪はしなくなったが、目が合うのに無視され、話すこともなくなった。
何が気に食わなかったのか、今となっては全く分からない。
私は彼の事が好きだったからそれなりにショックだった。
大学は流石に違う所に行くことになり、生活リズムも異なったせいか、家が近いというのに滅多に会う事は無くなり、いつしか百くんの事は昔の事として頭の片隅に追いやった。
そんな私も社会人となって三年目。
結婚一次ブームというのだろうか、次々と周りの子達が結婚をし始めていった。
私は別にまだ良いと思っていたが、同僚はそうでもないようだ。ある日の仕事帰りに呼び止められ、そのまま所謂合コンというやつに連れて行かれた。
「私こういうの好きじゃないって言ってたじゃん。」
「えー、たまには良いじゃん。ほら、今回イケメンばっかりだよ。」
隣に座った同僚に小声で訴えるもどこ吹く風。しかし同僚の言う通り、確かに今回のメンバーは全員イケメンだった。
同僚は目の前にいる褐色の肌をした男の人、鯉登さんにがっつり狙いを定めて場を盛り上げていた。
他の子もそれぞれ良いと思う人がいたのか、私は必然的に一人で目の前の食事を楽しむことになった。
そんな私の様子に気がついたのか、口の横にホクロがある男の人、宇佐美さんが少し申し訳なさそうな顔をして言った。
「ごめんね。もう一人来るんだけどちょっと遅れてて。」
どうやらもう一人は定時前に急にアクシデントが起きたようで、それを片付けてから来るとのことだった。
「元々そいつ乗り気じゃなかったんだけどね。みんなの写真貰ったからソイツにもダメ元で見せたら急に行くって言い出して。」
顔に大きな傷がある男の人、杉元さんがそう言った。
写真ってなんのこと?と隣をジロリと睨むと、どうやら私の了承無しに写真を送ったらしい。変な顔をしていなかったから良かったが、勝手に人の写真を見せるのはやめて欲しい。
ここまで来てしまったら仕方ない。少しヤケになりながらお皿に乗った唐揚げを頬張った時だった。
「すまない、遅れた。」
どうやらあと一人のお出ましのようだ。
すでに席は決まっていて、空いているのは私の目の前。さすがに社会人として無視する訳にもいかず、愛想笑いでもいいから挨拶はしておかないとなと顔をあげたその時だった。
「…っ!!」
「?夢野どうしたの?もしかして知り合い?」
特徴的な眉毛に瞳。頬にある大きな縫合痕は記憶にないものだったが、間違いなく百くんだった。
「ううん、いや、知らない。」
「そ?」
思わず否定してしまった。百くんは絶対私に気付いているはずだっが、何故か話を合わせてくれた。
「ははぁ、俺もこんな可愛い人が知り合いだったら今頃ここにはいないんですけどね。」
あ、遅くなりましたが尾形です、とわざとらしいくらい爽やかな笑顔で挨拶をする。それだけで女性陣は一気に百くんに興味を持ったみたい。
確かに百くんは昔から何だかんだでモテていた。
個性的な面持ちと、絶対本心から思っていないような甘ったるい言葉で女の子を誑かしてたっけ。
全員揃ったということで席替えをし、運良く私は百くんとは一番離れたところに座ることになった。
隣になったのは鯉登くん。彼とは趣味の海釣りの話で盛り上がった。鯉登くんは船を持っているということで、今度乗せてもらう約束をした。
連絡先を交換したところでお開きの時間になり、お会計を済ませ、解散となった。
百くんとは最初以外話すことはなかった。
気になる子がいたという事だから、この後誰かと二軒目なんて行くのだろうと考えたら、モヤモヤした。私は家直行ですけど、と少し不貞腐れた気持ちで駅まで行こうとしたら肩を抱かれた。
何?強引なナンパか?と思って相手の顔を見るとそこにいたのは百くんだった。
「夢野ちゃんよ、知らんぷりして帰るのかよ。」
「ひゃ、っ」
いきなり耳元で囁かれ、思わず変な声が出てしまった。
カァと顔と耳に熱が集まり、咄嗟に耳を抑えて距離を取る。
「……へー。お前、結構イイ声出すんだな。」
「な!」
久しぶりに会うと言うのに今も昔と意地悪なのは変わらない。いや、大人になった分タチが悪い。
「もう、なんなの!」
こちらは怒ってると言うのに、百くんは随分と機嫌が良さそうだ。再び私の肩を抱き、駅まで向かう。
あれ?二軒目行くんじゃなかったの?
「元気にしてたか?」
「…うん。百くんは?」
「変わらん。」
近況報告、と言うのだろうか。距離を探り合う会話をしながら歩いていると百くんは突然脈絡もなく言ったのだ。
「今日はお前が来るって聞いたから来た。でなきゃこんな面倒な所には行かねえ。」
「……それってどう言う意味?」
「もうイイ大人なんだ。意味なんて分かんだろ。」
それでもちゃんと聞きたいんだとジッと目を見つめてやると、ははぁと乾いたように笑った。笑い方は変わらないな、と思っていたらポケットのスマホが震えた。
急ぎの連絡かもしれないと取り出すと鯉登さんからだった。メッセージが見えたようで、少しだけ肩に置かれた手に力が入ったのが分かった。
「気が変わった。じっくりねっとり教えてやる。」
そのまま有無を言わさず、百くんの自宅に連れていかれたのは言うまでもない。
「そういえば今日俺の誕生日だったな。
……いいプレゼント貰ったよ。」