貴方を想う

 年末にかけて仕事はいよいよ忙しくなってきた。
 家に帰ってテレビをつけるもいよいよ特番だらけになっていて、年の瀬を感じる。

 私の方も忙しさは例外ではなく、連日のデスクワークのせいで足は浮腫んでしょうがないし、肩も腕を回すだけでゴリゴリという。もはや年末の恒例行事だ、しょうがないと諦めている。
 気休めでしかないかもしれないが、今日は入浴剤を疲労回復効果があると謳っているものにしよう。
 クリスマスではちょっと食べ過ぎてしまったから、軽くそして簡単に作れる鍋にしてしまおう。などと考えながら準備していく。

 鍋に食材を放り込んで、コトコトと煮込んでいる間にお風呂の掃除をする。戻って来て、鍋の様子を見ながら一本目のビールに口をつける。
 そういえば、尾形に年末も一緒に過ごそうと伝えたが、はなしてどちらの家で過ごすつもりなのだろうか。もし家に来るとなれば、今日明日と大掃除をしておかなければいけないし、食材も買い込まなければならないし、食器も用意しておかなければいけない。
 尾形に年末はどちらの家で過ごすか、とメッセージを送ると同じタイミングで見ていたようで、すぐに「お前の家で過ごしたい」と返信が来た。
 了解と書かれた黒猫のスタンプを押したところでお風呂が沸いたと知らせる音がした。
 飲み終えたビールを片付けながら鍋の火を消し、お風呂場へと向かった。


 ポカポカに温まったところでもう一本冷蔵庫からビールを取り出す。
 お風呂上がりにグイッと飲む姿は自分で言うのも何だがおじさんっぽい。
 そういえば、そう言うところが嫌なんだと言われ、別れた男たちもいたな、と思い出す。けれど尾形は、それもお前らしいなと言ってくれたし、お前みたいなやつの方が気が楽だと笑ってくれた。
 普段表情をあまり変えない尾形があまりにも柔らかく笑うから、一瞬幻を見たのかと思って思わず間抜けな顔をしたんだっけ。

 ふふふ、と鍋を前に一人笑ってしまった。つい一昨日まで一緒にいたはずの尾形がもう恋しかった。

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