痕
昨日は普通に帰るつもりだった。
それなのになんだかんだ丸め込まれて、夕飯まで食べて、その後にまったりしていたらいつの間にか帰るタイミングを逃してしまい今に至る。
「この前来た時の服置きっぱなしにしといてよかったな。」
「嘘でしょ?確信犯?」
「さぁな」
気がついたら泊まることになり、もちろん泊まったら泊まったでソウイウ事もする。そのせいで今朝はギリギリまで寝てしまっていた。
なので家に帰ることも出来ず、尾形の家から直接会社へ向かうことになった。
幸い尾形の家には、数は少ないが私物をいくつか置いてあったので仕事に行く分には問題なかった。
ただし、会社に行くだけなら、の話だ。
宇佐美は同期のよしみで付き合った時から報告していたから、尾形のうちから出社したことがバレても問題はない。
問題は他の人たちだ。
今のところうまく立ち回っているお陰で宇佐美以外にはバレていないし、バラす予定もない。
これは何としてでもバレないようにしなければならない。
「とりあえず、駅過ぎたら少し時間ずらして会社行くから!」
「なんでだよ、一緒にいけばいいだろうが。」
「尾形と私の家じゃ使う駅が違うんだから一緒にいたらおかしいでしょ。」
そういう私に、尾形は納得できないと言った顔をしたが、休みになったらまた遊びにくるから、と餌をぶらさげて何とか機嫌をとった。
と、言うわけで出勤中も誰かに会う事もなく、無事会社に着いた。
エレベーターがちょうどよく来たので、周りの人に合わせて乗り込む。
するとそこでようやく知り合いに出会った。
「おはよう、有古くん。」
「あ、おはようございます。」
ペコリと小さく頭を下げて挨拶をする有古くんは体こそ大きいがまるで子供のように可愛らしい。そんな有古くんが私の顔をじっと見つめていたことに気付き、首を傾げる。
「どうしたの?」
「へ、あ、いや。あの今日の先輩、何だかいつもと違うような気がして…」
「そ、そう?」
思わずドキッとしてしまったが、なるべく平静を装っていつも通り返事をする。すると有古くんは何処とは言えないんですけど、何となくと言葉を濁して言った。
どうやら直感で何かを感じ取っているらしいが、それが何なのか分かっていないようだった。
そんな時にエレベーターが止まり、何人か追加で乗り込んできた。
「おう、有古とお嬢さんじゃねえか。」
「菊田課長、おはようございます。」
「おはようございます。」
そこに現れたのは菊田課長だった。彼が私のことをお嬢さんと呼ぶのは今に始まったことじゃない。それが嫌味に聞こえないのは持ち前のダンディな雰囲気のおかげなのか何なのか。
そんな菊田課長はチラリと私の方を見ると、首をトントンと指で合図しながら口パクで、見えてる、と言った。何が?と思ったが、すぐさま何を言っているか分かり、サーっと血の気が引いた。
部署のフロアにつくや否や化粧室へ駆け込み慌てて鏡を見る。
見るとキスマークなんて可愛いものではなく、噛み跡が首筋にあった。髪を下ろしていた事もあり、ほんの少しだけ見えていた程度だが、髪を結んでいたらがっつり見えていただろう。
それにしても、これに気付くなんて菊田課長、侮れない…。
とりあえず尾形には怒りのスタンプを嫌がらせのように送りつけておいた。
それなのになんだかんだ丸め込まれて、夕飯まで食べて、その後にまったりしていたらいつの間にか帰るタイミングを逃してしまい今に至る。
「この前来た時の服置きっぱなしにしといてよかったな。」
「嘘でしょ?確信犯?」
「さぁな」
気がついたら泊まることになり、もちろん泊まったら泊まったでソウイウ事もする。そのせいで今朝はギリギリまで寝てしまっていた。
なので家に帰ることも出来ず、尾形の家から直接会社へ向かうことになった。
幸い尾形の家には、数は少ないが私物をいくつか置いてあったので仕事に行く分には問題なかった。
ただし、会社に行くだけなら、の話だ。
宇佐美は同期のよしみで付き合った時から報告していたから、尾形のうちから出社したことがバレても問題はない。
問題は他の人たちだ。
今のところうまく立ち回っているお陰で宇佐美以外にはバレていないし、バラす予定もない。
これは何としてでもバレないようにしなければならない。
「とりあえず、駅過ぎたら少し時間ずらして会社行くから!」
「なんでだよ、一緒にいけばいいだろうが。」
「尾形と私の家じゃ使う駅が違うんだから一緒にいたらおかしいでしょ。」
そういう私に、尾形は納得できないと言った顔をしたが、休みになったらまた遊びにくるから、と餌をぶらさげて何とか機嫌をとった。
と、言うわけで出勤中も誰かに会う事もなく、無事会社に着いた。
エレベーターがちょうどよく来たので、周りの人に合わせて乗り込む。
するとそこでようやく知り合いに出会った。
「おはよう、有古くん。」
「あ、おはようございます。」
ペコリと小さく頭を下げて挨拶をする有古くんは体こそ大きいがまるで子供のように可愛らしい。そんな有古くんが私の顔をじっと見つめていたことに気付き、首を傾げる。
「どうしたの?」
「へ、あ、いや。あの今日の先輩、何だかいつもと違うような気がして…」
「そ、そう?」
思わずドキッとしてしまったが、なるべく平静を装っていつも通り返事をする。すると有古くんは何処とは言えないんですけど、何となくと言葉を濁して言った。
どうやら直感で何かを感じ取っているらしいが、それが何なのか分かっていないようだった。
そんな時にエレベーターが止まり、何人か追加で乗り込んできた。
「おう、有古とお嬢さんじゃねえか。」
「菊田課長、おはようございます。」
「おはようございます。」
そこに現れたのは菊田課長だった。彼が私のことをお嬢さんと呼ぶのは今に始まったことじゃない。それが嫌味に聞こえないのは持ち前のダンディな雰囲気のおかげなのか何なのか。
そんな菊田課長はチラリと私の方を見ると、首をトントンと指で合図しながら口パクで、見えてる、と言った。何が?と思ったが、すぐさま何を言っているか分かり、サーっと血の気が引いた。
部署のフロアにつくや否や化粧室へ駆け込み慌てて鏡を見る。
見るとキスマークなんて可愛いものではなく、噛み跡が首筋にあった。髪を下ろしていた事もあり、ほんの少しだけ見えていた程度だが、髪を結んでいたらがっつり見えていただろう。
それにしても、これに気付くなんて菊田課長、侮れない…。
とりあえず尾形には怒りのスタンプを嫌がらせのように送りつけておいた。