バレー部の尾形

 高校時代の私は冴えなくて(いや今でも冴えないままなんだけど…)、あの頃は本当に自信がなかった。
 だからイベントなんて本当に好きじゃなかったんだ。


「ねえ、次どこ?」
「次は、えーと体育館でバスケの応援」

 球技大会なんて無くなればいいのに。
 何回も願ったのに結局無くならなかったそのイベントは今年も相変わらず行われている。
 初戦敗退の私たちは同じクラスの他競技の応援に行かねばならない。

「あー……、まだ前の試合延びてる。バレーやってるよ。」

 決勝戦ともあってか、中々にエキサイティングな試合運びに、普段全く興味がなかった私ですらグッと手に力が入ったのを覚えてる。

「おら、いけっ!!」
「よしゃ!」

 綺麗に打ち上げられたトス。ソレを上手に勢いに変えた鋭いサーブ。2人の華麗な技でその試合は終了。

「きゃー!!!見た?」
「見た見た!!」
「最後の野間も尾形くんもカッコよかった!」

 あの2人、野間くんと尾形くんっていうんだ、とそこで初めて尾形の事を知ったんだっけ。
 けれどその後すぐにバスケの試合が始まり、2人のことはすぐに忘れてしまっていた。



「あの、落としましたよ」
「あ、ありがとうございます。……っ!」
「?」

 次に尾形に会ったのはとある日の放課後。

 吹奏楽だった私はパート練へ向かうべく教室へと急いだ。
 そんな時に楽譜を一枚落としてしまったらしい。それを拾ってくれたのが尾形だった。
 向こうは当然私のことなど知らないから、ビックリしたのが不思議だったようだ。
 慌てて楽譜を受け取り、教室へと急いだ。



****



「尾形くん、女バレの子と付き合い始めたらしいよ。」
「へー。」

 名前を聞くとカースト上位の子だったから、あーやっぱりな、なんて考えたんだ。
 今思えばズキズキと痛む心が初めて尾形を好きだって教えてくれていたんだと思う。
 自分から何もアピールしなかったのが悪かったのだ、と自分を恨み、そしてお似合いの2人がいつまでも続くように、と幸せを願い、そして卒業した。



****



「……で今に至る、と。」
「いやいやいやいや!!
大事なところ話してないでしょ!!」
「そうだぞ!
何で尾形と付き合い始めたのか聞いてないからな!」
「……うるせえ。」

 そう、あれから大学は違ったが、同じ会社に入社し、あれよあれよという間に付き合うことになり、尾形の友人だという白石や杉元くん、明日子ちゃんも紹介されてすぐに仲良くなった。
 今日は明日子ちゃんのお家にお邪魔して、タコパしようという話になった。
 そこで出たのが私たち二人の馴れ初めという訳だ。

「まあまあ、今日はここまでってことで。」
「今日の所はだからな!」
「えー?尾形ちゃーん、教えてよぉ」
「……はっ」

 隣の尾形は鼻で笑って三人をあしらう。
 そんな中、私は1人黙々とたこ焼きを作ってお皿に盛り付ける。

「はーい、出来たよー!青のりかける?」

 食欲に負けた三人はぐぬぬ……と悔しそうな顔をして、たこ焼きに手をつけ始めた。
 その脇でそっと手を握る二人を誰も知らない。

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