結婚発表
この度、尾形百之助は結婚する運びとなりました。
ただ本当に心から好きになり、誰にも渡したくなくて、結婚という選択肢を選んだに過ぎなかったが、こうもいろんな奴らに祝福されるとは思わなかった。
応援してくれている人があっての仕事だ。結婚の報告は事務所からきちんとしたい。そう伝えたら、それはそれは優秀なマネージャーや経営陣が動いてくれて、スムーズに事が動いた。
「色々とすまなかった、勇作さん。」
迷惑をかけたなと運転している勇作さんに声をかけると、ミラー越しに苦笑しながら勇作さんは言った。
「兄様、そこはすまなかった、ではなくありがとうと言っていただきたいですね。」
結構頑張れましたよ、私。と自信満々に続ける勇作の姿を見て、今度は自分が苦笑する番だった。
確かにここ数週間はあちこちに働きかけしてくれ、本当に忙しそうだったのは知っている。だから俺は素直にありがとうと伝えたのだ。その言葉は小さかく聞き取りづらかっただろうに、ミラー越しの勇作さんは柔らかい目をして微笑んだのだった。
安全運転で着いたのは当然彼女が待っている自宅。何が起きてもすぐに対応できるようにとコンシェルジュ付きのマンション。エントランスでそんな彼らに挨拶をした後、エレベーターに乗り、ようやく辿り着いたのは彼女が待つ部屋だった。
ドアを開けると、遅くだというのにパタパタと控えめなスリッパの音を立てながら、妻になった女が迎えに来てくれた。
「百之助さん、おかえりなさい。」
「ただいま。」
先日婚姻届を出した時もそうだったが、なんだかこういう夫婦を感じる時、少しこそばゆい。長い事付き合っていたというのに、こうしておかえりと言ってくれた言は何回もあったというのに、だ。無償に胸が苦しくなって、靴を脱ぐのもそこそこに目の前にいる彼女を抱きしめた。
きっとドクドクと脈打つ鼓動が彼女にも聞こえた事だろう。彼女は小さく笑い、そして再びおかえりなさいと言って背中に腕を回した。
ああ、こんな幸せな時間が俺にもあっていいのか。そう感じて、なぜだか泣きたくなった。彼女を潰さない程度にギュッと抱きしめ、それから二人で笑い合った。
リビングに戻った俺たちは、お互い今日一日がいかに慌ただしく、そして嬉しい一日だったことを報告しあった。杉元や白石、宇佐美らはSNSで、土方の爺さんや門倉、牛山たちのおっさん世代からは直接連絡が入った。他にも同じ事務所のやつらなど数多くの知り合いがお祝いのメッセージをくれたのだった。
実は同じ俳優同士気心が知れた杉元や土方の爺さんだけ、彼女と結婚すると先に報告していた。
最初、何かのきっかけで長年付き合っている彼女がいると話した事があった。しかし奴らは失礼なことに、本当に彼女は存在している人物なのか、なんてひどく驚いていたので、二人で写っている写真を見せてやったのだった。その写真を見た二人はしばらく間を置いた後、目に涙を溜めるほど爆笑し、いい人と出会ったなと言ってきた。(ちなみに見せた写真は二人で某ネズミの国に行った時、カチューシャを被らされて撮った写真だった。)
それ以来、会えば何かと彼女とのことを聞いてきたり、最近撮った写真を見せろなどと要求してくるものだから、嫌々ながら最終的に会わせることにしたのだった。
「ぅわ〜…〇〇ちゃんって本当にいたんだね!しかもめっちゃ可愛いしいい子じゃん!」と言ったのは杉元。
「私がもう少し若かったら尾形なんぞに渡さなかっただろうに…。」と言ったのは土方の爺さんだった。
そんな二人の反応に苦笑しながらも、対応してくれた彼女には、今でも頭が下がるばかりだ。二人が帰った後、粗相がなかったかなぁと心配そうに言っていた彼女が可愛らしくて、我慢できなくなったのは今でも懐かしい。
そんな彼女もごく親しい友人には俺と結婚したことを、昔からの友人だというカエコさんと紅子さんの二人には伝えたそうだ。三人のメッセージを見せてもらったが、おめでとうというスタンプが3回に1回は送られていて、本当に自分のことのように祝ってくれているのが分かった。
「ね、百之助さん。」
「ん?」
本当に良かったね、みんなからこんなにお祝いしてもらえて、と少し涙交じりに言う彼女の肩をそっと抱いて、そうだなと俺を頷いた。
ただ本当に心から好きになり、誰にも渡したくなくて、結婚という選択肢を選んだに過ぎなかったが、こうもいろんな奴らに祝福されるとは思わなかった。
応援してくれている人があっての仕事だ。結婚の報告は事務所からきちんとしたい。そう伝えたら、それはそれは優秀なマネージャーや経営陣が動いてくれて、スムーズに事が動いた。
「色々とすまなかった、勇作さん。」
迷惑をかけたなと運転している勇作さんに声をかけると、ミラー越しに苦笑しながら勇作さんは言った。
「兄様、そこはすまなかった、ではなくありがとうと言っていただきたいですね。」
結構頑張れましたよ、私。と自信満々に続ける勇作の姿を見て、今度は自分が苦笑する番だった。
確かにここ数週間はあちこちに働きかけしてくれ、本当に忙しそうだったのは知っている。だから俺は素直にありがとうと伝えたのだ。その言葉は小さかく聞き取りづらかっただろうに、ミラー越しの勇作さんは柔らかい目をして微笑んだのだった。
安全運転で着いたのは当然彼女が待っている自宅。何が起きてもすぐに対応できるようにとコンシェルジュ付きのマンション。エントランスでそんな彼らに挨拶をした後、エレベーターに乗り、ようやく辿り着いたのは彼女が待つ部屋だった。
ドアを開けると、遅くだというのにパタパタと控えめなスリッパの音を立てながら、妻になった女が迎えに来てくれた。
「百之助さん、おかえりなさい。」
「ただいま。」
先日婚姻届を出した時もそうだったが、なんだかこういう夫婦を感じる時、少しこそばゆい。長い事付き合っていたというのに、こうしておかえりと言ってくれた言は何回もあったというのに、だ。無償に胸が苦しくなって、靴を脱ぐのもそこそこに目の前にいる彼女を抱きしめた。
きっとドクドクと脈打つ鼓動が彼女にも聞こえた事だろう。彼女は小さく笑い、そして再びおかえりなさいと言って背中に腕を回した。
ああ、こんな幸せな時間が俺にもあっていいのか。そう感じて、なぜだか泣きたくなった。彼女を潰さない程度にギュッと抱きしめ、それから二人で笑い合った。
リビングに戻った俺たちは、お互い今日一日がいかに慌ただしく、そして嬉しい一日だったことを報告しあった。杉元や白石、宇佐美らはSNSで、土方の爺さんや門倉、牛山たちのおっさん世代からは直接連絡が入った。他にも同じ事務所のやつらなど数多くの知り合いがお祝いのメッセージをくれたのだった。
実は同じ俳優同士気心が知れた杉元や土方の爺さんだけ、彼女と結婚すると先に報告していた。
最初、何かのきっかけで長年付き合っている彼女がいると話した事があった。しかし奴らは失礼なことに、本当に彼女は存在している人物なのか、なんてひどく驚いていたので、二人で写っている写真を見せてやったのだった。その写真を見た二人はしばらく間を置いた後、目に涙を溜めるほど爆笑し、いい人と出会ったなと言ってきた。(ちなみに見せた写真は二人で某ネズミの国に行った時、カチューシャを被らされて撮った写真だった。)
それ以来、会えば何かと彼女とのことを聞いてきたり、最近撮った写真を見せろなどと要求してくるものだから、嫌々ながら最終的に会わせることにしたのだった。
「ぅわ〜…〇〇ちゃんって本当にいたんだね!しかもめっちゃ可愛いしいい子じゃん!」と言ったのは杉元。
「私がもう少し若かったら尾形なんぞに渡さなかっただろうに…。」と言ったのは土方の爺さんだった。
そんな二人の反応に苦笑しながらも、対応してくれた彼女には、今でも頭が下がるばかりだ。二人が帰った後、粗相がなかったかなぁと心配そうに言っていた彼女が可愛らしくて、我慢できなくなったのは今でも懐かしい。
そんな彼女もごく親しい友人には俺と結婚したことを、昔からの友人だというカエコさんと紅子さんの二人には伝えたそうだ。三人のメッセージを見せてもらったが、おめでとうというスタンプが3回に1回は送られていて、本当に自分のことのように祝ってくれているのが分かった。
「ね、百之助さん。」
「ん?」
本当に良かったね、みんなからこんなにお祝いしてもらえて、と少し涙交じりに言う彼女の肩をそっと抱いて、そうだなと俺を頷いた。