B
「ははぁ、今日も今日とで買い込みますなぁ」
「げ、尾形さん」
おそらく近くに住んでいるだろう目の前の女は行動範囲も大体同じようで。
例のコンビニはもちろん、スーパーでも見かけるようになった。
「お前、げ、は失礼だろうが。」
「いやぁ、だって会社の外で会社の人と会うのはストレス以外何ものでも無いでしょ」
そのせいか今ではこうして軽口を言い合えるくらいまでの仲になった。
「それは、まあそうだな」
「でしょ?」
コンビニで会って以来、会社でこいつを見かけるたびに目で姿を追うようになった。
そして気付いたのだ。
「お前、外面良いもんな」
「完全に悪口じゃん。世渡り上手と言ってよ。」
「ははぁ」
困った人がいたらそっと助け、必要な資料は先回りをして準備をしている。
会社では気の利く良いやつだと評価は高い。けれど一度会社から離れるとグータラで良い加減な生活を送っている。
「今日は一段と荒れてんな。」
カゴに入ったものを見ると酒やらつまみやらがこれでもかというほど入っていた。
……そしてなぜかキャベツ一玉。
「今日はクソ上司の尻拭いをさせられたからね。飲まないとやっていけないの!」
そうして腕を振り上げ、ガツンと何かを殴るふりをした。
「あ、そうだ。尾形さん夕飯食べた?」
「いや、まだだ。」
「ほんと!良かったー。今日ひたすら千切りしたい気分だったんだよ。」
「なんだ、千切りしたい気分って。」
こんな誘い文句は今日が初めてではない。ストレスが溜まると酒に走る以外にも料理、というか食材を切り刻みたくなるらしいと気付いたのは何回目だったか。
「フォゼちゃんにも会える〜。」
「お前、それが目的じゃねぇか。」
「えー?んふふ。」
笑って誤魔化すんじゃねぇと小突いてから、手に持っていた食材を奪う。
「尾形さん、ありがとう。」
「ふん。」
****
「ぶみー!!」
家に帰るやいなや、フォゼ尾が飼い主の俺ではなく隣の女の方に飛びついた。
「んー、フォゼちゃん可愛い!」
なんだったらゴロゴロ喉まで鳴らしている。そんなフォゼ尾の首根っこを捕まえてポイッとソファへ投げる。
「ぶみゃ!!」
「あぁ、フォゼちゃん!!」
「千切りするんだろうが」
「そうだった!!フォゼちゃん、尾形さんちょっと待っててね」
……決してフォゼ尾が羨ましいと思った訳ではない。
本来の目的を伝えるとイソイソと買ってきたものをキッチンへ持っていき、準備を始めた。
今までは水と酒、必要最低限の食料にフォゼ尾用の肉や魚が入っているだけだった。
なのに今はどうだ。
冷蔵庫は作り置きが入っているタッパーで埋まっているし、冷凍庫は切り方ごとに分けられた食材がこれでもかと入っている。
すっかりコイツ仕様になってしまったとビールのプルタブを開けながら考える。
「あ!!先に飲んでる!!」
「いいじゃねぇか。お前だって飲めば良いだろう?」
「あはは、それもそうか」
そうして俺が渡したビールを傾けながら、手際よくつまみを作る。その後ろ姿を見ながらまた一口ビールを飲んだ。
「ぷみゃ。にゃー」
「ん?なんだよ。」
さっきまで料理を作っている所をウロウロしていたはずのフォゼ尾が、いつのまにか俺の近くにいた。そして何かを訴えるかのように手を一生懸命引っ張っている。
「あっち行けって?」
「み。」
意図が通じたからか、嬉しそうに鳴くフォゼ尾を肩に乗せ、言われた通りキッチンへと向かう。
キッチンへ向かうとジュージューと焼く音と旨そうな匂いに腹から音が出てしまい笑われた。
「はいはい。これでもつまんで待ってて。」
口に入れられた肉にビックリしつつも、もぐもぐと咀嚼する。肩に乗っていたフォゼ尾も同じものを貰ったようだった。
「ふは、おんなじ顔して食べてる。」
その飾り気のない笑顔に違うところが満たされた気がするのはきっと気のせいだ。
……そうきっと気のせい。
「げ、尾形さん」
おそらく近くに住んでいるだろう目の前の女は行動範囲も大体同じようで。
例のコンビニはもちろん、スーパーでも見かけるようになった。
「お前、げ、は失礼だろうが。」
「いやぁ、だって会社の外で会社の人と会うのはストレス以外何ものでも無いでしょ」
そのせいか今ではこうして軽口を言い合えるくらいまでの仲になった。
「それは、まあそうだな」
「でしょ?」
コンビニで会って以来、会社でこいつを見かけるたびに目で姿を追うようになった。
そして気付いたのだ。
「お前、外面良いもんな」
「完全に悪口じゃん。世渡り上手と言ってよ。」
「ははぁ」
困った人がいたらそっと助け、必要な資料は先回りをして準備をしている。
会社では気の利く良いやつだと評価は高い。けれど一度会社から離れるとグータラで良い加減な生活を送っている。
「今日は一段と荒れてんな。」
カゴに入ったものを見ると酒やらつまみやらがこれでもかというほど入っていた。
……そしてなぜかキャベツ一玉。
「今日はクソ上司の尻拭いをさせられたからね。飲まないとやっていけないの!」
そうして腕を振り上げ、ガツンと何かを殴るふりをした。
「あ、そうだ。尾形さん夕飯食べた?」
「いや、まだだ。」
「ほんと!良かったー。今日ひたすら千切りしたい気分だったんだよ。」
「なんだ、千切りしたい気分って。」
こんな誘い文句は今日が初めてではない。ストレスが溜まると酒に走る以外にも料理、というか食材を切り刻みたくなるらしいと気付いたのは何回目だったか。
「フォゼちゃんにも会える〜。」
「お前、それが目的じゃねぇか。」
「えー?んふふ。」
笑って誤魔化すんじゃねぇと小突いてから、手に持っていた食材を奪う。
「尾形さん、ありがとう。」
「ふん。」
****
「ぶみー!!」
家に帰るやいなや、フォゼ尾が飼い主の俺ではなく隣の女の方に飛びついた。
「んー、フォゼちゃん可愛い!」
なんだったらゴロゴロ喉まで鳴らしている。そんなフォゼ尾の首根っこを捕まえてポイッとソファへ投げる。
「ぶみゃ!!」
「あぁ、フォゼちゃん!!」
「千切りするんだろうが」
「そうだった!!フォゼちゃん、尾形さんちょっと待っててね」
……決してフォゼ尾が羨ましいと思った訳ではない。
本来の目的を伝えるとイソイソと買ってきたものをキッチンへ持っていき、準備を始めた。
今までは水と酒、必要最低限の食料にフォゼ尾用の肉や魚が入っているだけだった。
なのに今はどうだ。
冷蔵庫は作り置きが入っているタッパーで埋まっているし、冷凍庫は切り方ごとに分けられた食材がこれでもかと入っている。
すっかりコイツ仕様になってしまったとビールのプルタブを開けながら考える。
「あ!!先に飲んでる!!」
「いいじゃねぇか。お前だって飲めば良いだろう?」
「あはは、それもそうか」
そうして俺が渡したビールを傾けながら、手際よくつまみを作る。その後ろ姿を見ながらまた一口ビールを飲んだ。
「ぷみゃ。にゃー」
「ん?なんだよ。」
さっきまで料理を作っている所をウロウロしていたはずのフォゼ尾が、いつのまにか俺の近くにいた。そして何かを訴えるかのように手を一生懸命引っ張っている。
「あっち行けって?」
「み。」
意図が通じたからか、嬉しそうに鳴くフォゼ尾を肩に乗せ、言われた通りキッチンへと向かう。
キッチンへ向かうとジュージューと焼く音と旨そうな匂いに腹から音が出てしまい笑われた。
「はいはい。これでもつまんで待ってて。」
口に入れられた肉にビックリしつつも、もぐもぐと咀嚼する。肩に乗っていたフォゼ尾も同じものを貰ったようだった。
「ふは、おんなじ顔して食べてる。」
その飾り気のない笑顔に違うところが満たされた気がするのはきっと気のせいだ。
……そうきっと気のせい。