木曜日。
お昼休み。
いつもはコンビニでサンドイッチやおにぎりを適当に買って済ますが今日は何となく外で食べたい気分だったのでお財布と携帯、それから読んでいる本を持った外に出た。
夏の強い日差しに目を細めながら、気になっていたお店まで向かう。
「あ。」
同じくお昼休みで外に出たのか尾形を見かけた。
どうせだから一緒にご飯食べようと声かけようとして声を掛けようとしたその時だった。
後ろからめちゃくちゃ色っぽい女のひとが尾形に声をかけていた。何を話しているか分からないが、尾形はその人と少し話した後、同じ方向に歩いていった。
(……ふーん。なんか嬉しそうじゃん。)
普段は無表情なのに、その女の人と話している時は穏やかな表情をしていた気がする。
なんでそんな顔してるんだよ、とか思わなかった訳じゃない。
けれど別に彼女でも何でもない自分がそんなことを言える訳もない。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、御目当てのお店は諦め、くるりと踵を返す。
****
「どーもぉ。」
「え……?」
いきなり知らない人と目が合ったと思ったら一気に距離を詰めてきた。物理的に、だ。
「夢野さん、で合ってるよね?この間百之助の隣にいた奴でーす。」
「あ、」
そう言われ、この間自販機で尾形の隣にいた黒子が特徴的な人だと思い出す。
「その反応、今思い出した感じじゃん。ま、良いや。お昼まだでしょ?」
「え?まぁそう、ですね……。」
「じゃあ一緒に食べよ。あ、あと同い年だから敬語はなしね。」
一気に捲し立てられ、こちらから話す余裕はなく。あっという間に一緒にランチすることになってしまった。
「改めてまして、尾形と同じ部署。中途で入った宇佐美時重です。よろしくね。」
「あ、夢野夢子です。尾形とは同期入社。」
宇佐美くんはガッツリ生姜焼き定食、私は焼き魚定食を食べながら自己紹介をする。
え?なにこれ。怖いんだけど。
けれどそんな思いとは裏腹に宇佐美くんは尾形について言いたい放題言ってきた。
「百之助の相手大変でしょ。あいつ甘ったれの鼻垂れ小僧だし。」
「鼻垂れ小僧……」
「表情にこそ出さないけど、かまってちゃんだしさ。」
「かまってちゃん……」
尾形をそんな風に言う人は初めて会った。
花形の営業部でバリバリ働いている尾形。
私の知らない尾形の姿に、ただ宇佐美くんが話す単語を繰り返すしか出来なかった。
「あいつさ、夢野さんの話、結構するんだよ。だからどんな子なのかな?って気になってたんだよね。」
「尾形が?私の話?」
「そ。」
「……同期が少なくなったからじゃないかな?」
最初こそ同期と呼べる人達はそこそこの人数いた。けれど結婚や出産、転職などなどいろんな理由で会社から居なくなっていった。
しかも全国に支店があるおかげでさらにバラバラになり、本社で働いている奴といえば部署は違えど尾形と私だけだった。だから時間がある時は飲みに行ったり、気になる所は調査という名目で一緒に出かけたりした。
週末の約束もソレだった。
「……ふぅーん。」
宇佐美くんはニヤニヤしながら頷いた。
「なに?」
「尾形かぁ……。ま、悪いやつじゃないからさ、これからも仲良くしてやってよ。」
「ふふ、なにソレ。宇佐美くん、尾形のお兄ちゃんみたいだね」
「そ、あいつがダメダメだから僕がサポートしてやるの。」
「ウケる。そんな尾形見たことない」
宇佐美くんは人の距離を積めるのが上手だ。
気が付いたらお昼休みをめいいっぱい使ってしゃべり通していた。
お店から戻る時、またまたタイミング悪く尾形に会ってしまった。
「あれ、百之助じゃん。噂をすれば何とかってやつ?」
「だね。」
やはり先ほど見かけた時と同じように色っぽい女の人と一緒だった。
おそらくお昼を一緒に摂ったのだろう。尾形はいつも私が目の前にいる時のように髪を撫で付けながらその人と話していた。
「あの女の人……」
「あぁ、あの人。中々のやり手だよ。狙ったものは絶対勝ち取ってくる人。」
「営業部の人なんだ。」
モヤモヤした気持ちがさっきよりも大きくなった。尾形がこっちに気づいたのが分かった。
しかし慌てて顔を背けて宇佐美くんの腕をとって会社へと戻った。
****
宇佐美くんと分かれ、デスクについてもまだ心の中にはモヤがかかったままだった。
尾形は一体あの女性とどんな話をしたのだろう。私の全然知らない話題で盛り上がったのだろう。そんな想像が安易にできてしまうくらいお似合いな2人だった。
そろそろ潮時かもしれない。
そう思うと目の前の景色がうっすらボヤけて来た気がするが、きっとパソコン画面の見つめ過ぎだろうと自分に言いきかせる。
長年のこの恋心に終止符を打たなければいけない時期がやって来たのだろう。
あぁ嫌だな、心の底で思いながらパソコンを動かし続けた。
いつもはコンビニでサンドイッチやおにぎりを適当に買って済ますが今日は何となく外で食べたい気分だったのでお財布と携帯、それから読んでいる本を持った外に出た。
夏の強い日差しに目を細めながら、気になっていたお店まで向かう。
「あ。」
同じくお昼休みで外に出たのか尾形を見かけた。
どうせだから一緒にご飯食べようと声かけようとして声を掛けようとしたその時だった。
後ろからめちゃくちゃ色っぽい女のひとが尾形に声をかけていた。何を話しているか分からないが、尾形はその人と少し話した後、同じ方向に歩いていった。
(……ふーん。なんか嬉しそうじゃん。)
普段は無表情なのに、その女の人と話している時は穏やかな表情をしていた気がする。
なんでそんな顔してるんだよ、とか思わなかった訳じゃない。
けれど別に彼女でも何でもない自分がそんなことを言える訳もない。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、御目当てのお店は諦め、くるりと踵を返す。
****
「どーもぉ。」
「え……?」
いきなり知らない人と目が合ったと思ったら一気に距離を詰めてきた。物理的に、だ。
「夢野さん、で合ってるよね?この間百之助の隣にいた奴でーす。」
「あ、」
そう言われ、この間自販機で尾形の隣にいた黒子が特徴的な人だと思い出す。
「その反応、今思い出した感じじゃん。ま、良いや。お昼まだでしょ?」
「え?まぁそう、ですね……。」
「じゃあ一緒に食べよ。あ、あと同い年だから敬語はなしね。」
一気に捲し立てられ、こちらから話す余裕はなく。あっという間に一緒にランチすることになってしまった。
「改めてまして、尾形と同じ部署。中途で入った宇佐美時重です。よろしくね。」
「あ、夢野夢子です。尾形とは同期入社。」
宇佐美くんはガッツリ生姜焼き定食、私は焼き魚定食を食べながら自己紹介をする。
え?なにこれ。怖いんだけど。
けれどそんな思いとは裏腹に宇佐美くんは尾形について言いたい放題言ってきた。
「百之助の相手大変でしょ。あいつ甘ったれの鼻垂れ小僧だし。」
「鼻垂れ小僧……」
「表情にこそ出さないけど、かまってちゃんだしさ。」
「かまってちゃん……」
尾形をそんな風に言う人は初めて会った。
花形の営業部でバリバリ働いている尾形。
私の知らない尾形の姿に、ただ宇佐美くんが話す単語を繰り返すしか出来なかった。
「あいつさ、夢野さんの話、結構するんだよ。だからどんな子なのかな?って気になってたんだよね。」
「尾形が?私の話?」
「そ。」
「……同期が少なくなったからじゃないかな?」
最初こそ同期と呼べる人達はそこそこの人数いた。けれど結婚や出産、転職などなどいろんな理由で会社から居なくなっていった。
しかも全国に支店があるおかげでさらにバラバラになり、本社で働いている奴といえば部署は違えど尾形と私だけだった。だから時間がある時は飲みに行ったり、気になる所は調査という名目で一緒に出かけたりした。
週末の約束もソレだった。
「……ふぅーん。」
宇佐美くんはニヤニヤしながら頷いた。
「なに?」
「尾形かぁ……。ま、悪いやつじゃないからさ、これからも仲良くしてやってよ。」
「ふふ、なにソレ。宇佐美くん、尾形のお兄ちゃんみたいだね」
「そ、あいつがダメダメだから僕がサポートしてやるの。」
「ウケる。そんな尾形見たことない」
宇佐美くんは人の距離を積めるのが上手だ。
気が付いたらお昼休みをめいいっぱい使ってしゃべり通していた。
お店から戻る時、またまたタイミング悪く尾形に会ってしまった。
「あれ、百之助じゃん。噂をすれば何とかってやつ?」
「だね。」
やはり先ほど見かけた時と同じように色っぽい女の人と一緒だった。
おそらくお昼を一緒に摂ったのだろう。尾形はいつも私が目の前にいる時のように髪を撫で付けながらその人と話していた。
「あの女の人……」
「あぁ、あの人。中々のやり手だよ。狙ったものは絶対勝ち取ってくる人。」
「営業部の人なんだ。」
モヤモヤした気持ちがさっきよりも大きくなった。尾形がこっちに気づいたのが分かった。
しかし慌てて顔を背けて宇佐美くんの腕をとって会社へと戻った。
****
宇佐美くんと分かれ、デスクについてもまだ心の中にはモヤがかかったままだった。
尾形は一体あの女性とどんな話をしたのだろう。私の全然知らない話題で盛り上がったのだろう。そんな想像が安易にできてしまうくらいお似合いな2人だった。
そろそろ潮時かもしれない。
そう思うと目の前の景色がうっすらボヤけて来た気がするが、きっとパソコン画面の見つめ過ぎだろうと自分に言いきかせる。
長年のこの恋心に終止符を打たなければいけない時期がやって来たのだろう。
あぁ嫌だな、心の底で思いながらパソコンを動かし続けた。