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 いつもよりぐっすり眠れたお陰で、スッキリ起きることができた。

 仕事で凝り固まった肩をぐるぐると回し、軽くストレッチをしたら出かける準備をする。
 忘れ物がないか、服装は大丈夫か、色々気になるところではあるが約束の時間に絶対に遅れるわけにはいかない。慌てて鍵を持って家を出た。



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 やってきたのは夜は人知れず人気の小料理屋さん。お酒によく合う料理を出してくれるトメさんのお店だ。
 かく言う私も仕事帰り、少し、いや、かなりの頻度でお世話になっている。
 その時はトメさんが尾形のお母様だとは知らず、後から紹介を受けてびっくりしたものだった。

「いらっしゃい。」
「無理言ってごめんなさい。」
「何言ってるの。頼ってくれてありがとう。」

 今日はトメさんに料理を教えてもらう約束をしていた。
 トメさんの美味しい料理を食べて育ってきたからか、尾形はあんまりお酒が飲めないのに酒の肴になる料理が好きだ。

 せっかくだから誕生日の時には慣れ親しんだ味を食べてもらいたいと思い、ダメ元でトメさんに料理を教えてもらえないかとお願いをした。
 断られるかと思っていたが、すんなりと了承を頂けたので善は急げと早速今日やってきたのだった。

「じゃあ、簡単なものからやっていきましょうか。」

 夜の部の仕込みも込めて、トメさんは手際よく野菜を切っていく。私はその様子を見ながらメモを片手に書き写す。
 そうしてあっという間におひたしやら煮物やら和の惣菜が出来上がっていく。そして次は、と出てきたのはアジ。三枚おろしにするところからスタートだ。

「じゃあこれはやってもらおうかしら。」
「私が、ですか?」
「そうそう。何事も慣れだから。今やってみて。」

 昔母親から教わったのを思い出しながら魚を三枚におろしていく。

「うん、良いんじゃないかな?」

 何とか分けれたソレをみてトメさんは上手上手と褒めてくれた。そのままその身をアジフライ様にした味をつけて衣を纏わせた。そのまま揚げてしまうのかと思っていたら、いつもは注文が入ったら揚げるから、と冷蔵庫に入れて最後に揚げることにした。

 その後、他の料理も私が作り、トメさんに味をチェックしてもらった。

 旨みが感じれらないからこうしたほうが良いなどのアドバイスを受けながら、なんとか及第点を頂ける作品がいくつか出来た。

「トメさん、ありがとうございます。」 
「いいえ。これで私から息子に誕生日プレゼントが出来たわ。」
「???」

 ぽそりと溢したその言葉の意味が分からなかったが、取り敢えず笑顔でお礼を言ってその場を後にした。
 これで当日の料理は何とかなりそうだ、とメモを読み返しながら歩いていたらスマホが震えた。見ると尾形からの電話だったので、すぐさま通話ボタンを押して対応する。

「もしもし?」
「俺だ。映画のチケットを二枚貰った。予定何もなかったら明日、行かないか?」

 聞けば私が見たいと言ったチケットだった。二つ返事で行くと伝えたら、その即決さに驚かれたが柔らかい声で、明日十時いつもの広場でな、と約束して電話を切った。


 尾形のお誕生日まであと残り八日。

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