ベランダから見る朝日

 朝目を覚ますと、目の前に夢子がいた。
 スースーと規則正しい寝息を立てて寝ている。
 さらりとした髪をそっと撫でると、少し擽ったそうそうに身を捩る夢子が愛おしい。
 そんな夢子と離れてしまうのは名残惜しいが、気付かれないようにゆっくりとベッドから出る。

 まだ朝早いからか、外は暗く静かだ。まるでこの世界には俺たちしかいないかのような錯覚に陥る。
 そんな非現実的な想像をしてしまった自分に、俺も変わったなと苦笑する。
 そろそろ時間かと、コーヒーメーカーをセットし、色違いで買ったカップを用意していたら、寝ぼけ眼の夢子がゆっくりとやってきた。

「蓮二、おはよ……」
「おはよう。もう少し寝ていても平気だぞ。」
「ん。でも隣に蓮二いないんだもん。」

 寒くて目が覚めたと身体を寄せてくる。

 いつからそんな可愛らしいことが出来るようになったのだ。またデータを更新する必要があるな。

 顔や態度には出さないが、こと夢子のことになるとどうにも冷静になれない。

「あ、そろそろ初日の出じゃない?」

 夢子が指差す方を見れば、ベランダ越しに先ほどよりも明るくなったら空が見えた。
 濃紺からオレンジへとグラデーションの色した空を眩しそうに眺める夢子の瞳は、先ほどまでの眠気はどこへ行ったのやらキラキラと輝いていた。

「せっかくだからベランダに出るか。」
「うん。」

 ベランダに出ると、外の空気は思ったよりも凛と澄んでいた。
 淹れたてのコーヒーが入ったマグカップを渡すと、夢子は嬉しそうに受け取り、再び身体を寄せてきた。

「寒いね。」
「ああ。」
「でもこうして初日の出を蓮二と見れて嬉しい。」
「俺もそう思う。」

 そう言った俺に夢子は口角をゆっくりと上げた。

「あけましておめでとう。今年もよろしく頼む。」
「あけましておめでとう。こちらこそ。」

 カツンとマグカップを軽く合わせて挨拶をする。同時に感じる自分以外の体温に、昨日散々堪能した熱を思い出し、ぐっと胸が熱くなる。

「……これは中々に大変だな。」
「ん?なんか言った?」
「いや、何でも無い。」

 これから始まる新しい生活に、期待と同時に自分の知らなかった感情が揺さぶられる予感がした。

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