甘さ控えめの恋
「柳ー、ここのところ計算式合わなくてさ、」
「ここの予算が違っているからだろう。」
「あ、本当だ。」
俺の知っている限り、あの二人は事務的な会話しかしていない。いや、雑談とかしてはいるけれど何と言うかあれで付き合ってるんだとか信じられない。
「まあ、二人には二人なりの距離があると思いますからね。」
そう言ったのは紳士な先輩。
この人はどっちかって言うと柳先輩よりだから、あんまり当てにならない。
「あ、おはよう赤也。」
「今日はきちんと起きられたんだな。」
「っす」
その日もいつも通りの先輩たち。
一緒に登校はしているものの、そこに恋人らしい空気は全くない。
……今日がバレンタインだと言うのに。
「そうだ、はい。」
「なんすか?」
「今日、バレンタインだからチョコ。」
「うそ!マジ!」
そう軽く渡された袋。
中を見るとそこにはチョコが入っているであろう箱があった。
貰えたという事実から思わず喜んでしまったが、慌てて柳先輩の表情を確認する。彼女が他の男にチョコ送っているところなんて見たくないだろう。
「俺のことは気にしなくていいぞ。」
「っす。」
この人に嫉妬という感情はないのだろうか。
全くもっていつも通りの表情にホッとする。と同時に、この二人の関係は本当に不思議でならない。
****
平日の今日。
中学三年とはいえ、ほとんどが内部進学するので卒業ギリギリまで部活をするのが当たり前で、当然我が男子テニス部も通常営業。
マネージャーである私も当然部活に参加する。とはいえ卒業も近いから、通常業務はもちろん、次のマネージャーへ引き継ぎをしたりもする。だからだろう。いつもよりバタバタした一日を過ごしていた。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、気が付いたら帰宅時間になっていた。
着替えを終えて更衣室から出ると、少し先に蓮二が待っているのが見えた。その手には相変わらず分厚い本があり、苦笑しながら早足で彼の元へと向かう。
「お待たせ。」
「いや、データ通りだ。」
何でもデータで分析してしまう彼は、私の行動もインプットしているようで、滅多にその表情を変えることはない。
……と思われているらしい。
長いこと一緒にいるせいか、彼の僅かな表情を読み取れるようになってきた。
だから今、彼がほんの少しだが不機嫌であることが手に取るように分かる。
原因はおそらく今朝、私が赤也にチョコを渡し、部活前にメンバーのみんなにも配ったからだろう。
そしてまだ彼にだけは渡していない。おそらくそれが一番の原因だろう。
未だ渡されていないのは一番最後に渡したいから。そんな乙女心を彼は分かっているはずなのにやはり目の前で渡されるのは気分が良いものではないらしい。
「蓮二ってば以外と独占欲強いよね。」
「お前限定だがな。」
その返事に気分がよくなった私はふふふと笑い、大事にとっておいた黄色の紙袋を彼に渡した。
「はい、これ。」
「ありがとう。」
そう言うや否や、彼は私の手を取り小さく息を吐いた。
「待てがこんなに辛いなんて思わなかった。」
身長は私よりはるかに高いのに、その言い分は可愛すぎる。思わず繋いでいた手を引き、近くのベンチに彼を座らせた。
「なにを「蓮二可愛い。」
身長差がなくなったことをいいことに、彼を抱きしめ、サラサラの髪を思い切り撫で回す。
「おい。」
「蓮二が嬉しいこと言ってくれるから。私なりの愛情表情です。」
てっきりすぐに止められるかと思ったが、予想に反してされるがままだったので、普段は滅多に見ることが出来ない後頭部に顎を乗せ、ギュッと抱きしめる。
「蓮二大好きだよ。」
「……俺も、夢子が好きだ。」
大きくて温かい手が背中に回された。
「ここの予算が違っているからだろう。」
「あ、本当だ。」
俺の知っている限り、あの二人は事務的な会話しかしていない。いや、雑談とかしてはいるけれど何と言うかあれで付き合ってるんだとか信じられない。
「まあ、二人には二人なりの距離があると思いますからね。」
そう言ったのは紳士な先輩。
この人はどっちかって言うと柳先輩よりだから、あんまり当てにならない。
「あ、おはよう赤也。」
「今日はきちんと起きられたんだな。」
「っす」
その日もいつも通りの先輩たち。
一緒に登校はしているものの、そこに恋人らしい空気は全くない。
……今日がバレンタインだと言うのに。
「そうだ、はい。」
「なんすか?」
「今日、バレンタインだからチョコ。」
「うそ!マジ!」
そう軽く渡された袋。
中を見るとそこにはチョコが入っているであろう箱があった。
貰えたという事実から思わず喜んでしまったが、慌てて柳先輩の表情を確認する。彼女が他の男にチョコ送っているところなんて見たくないだろう。
「俺のことは気にしなくていいぞ。」
「っす。」
この人に嫉妬という感情はないのだろうか。
全くもっていつも通りの表情にホッとする。と同時に、この二人の関係は本当に不思議でならない。
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平日の今日。
中学三年とはいえ、ほとんどが内部進学するので卒業ギリギリまで部活をするのが当たり前で、当然我が男子テニス部も通常営業。
マネージャーである私も当然部活に参加する。とはいえ卒業も近いから、通常業務はもちろん、次のマネージャーへ引き継ぎをしたりもする。だからだろう。いつもよりバタバタした一日を過ごしていた。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、気が付いたら帰宅時間になっていた。
着替えを終えて更衣室から出ると、少し先に蓮二が待っているのが見えた。その手には相変わらず分厚い本があり、苦笑しながら早足で彼の元へと向かう。
「お待たせ。」
「いや、データ通りだ。」
何でもデータで分析してしまう彼は、私の行動もインプットしているようで、滅多にその表情を変えることはない。
……と思われているらしい。
長いこと一緒にいるせいか、彼の僅かな表情を読み取れるようになってきた。
だから今、彼がほんの少しだが不機嫌であることが手に取るように分かる。
原因はおそらく今朝、私が赤也にチョコを渡し、部活前にメンバーのみんなにも配ったからだろう。
そしてまだ彼にだけは渡していない。おそらくそれが一番の原因だろう。
未だ渡されていないのは一番最後に渡したいから。そんな乙女心を彼は分かっているはずなのにやはり目の前で渡されるのは気分が良いものではないらしい。
「蓮二ってば以外と独占欲強いよね。」
「お前限定だがな。」
その返事に気分がよくなった私はふふふと笑い、大事にとっておいた黄色の紙袋を彼に渡した。
「はい、これ。」
「ありがとう。」
そう言うや否や、彼は私の手を取り小さく息を吐いた。
「待てがこんなに辛いなんて思わなかった。」
身長は私よりはるかに高いのに、その言い分は可愛すぎる。思わず繋いでいた手を引き、近くのベンチに彼を座らせた。
「なにを「蓮二可愛い。」
身長差がなくなったことをいいことに、彼を抱きしめ、サラサラの髪を思い切り撫で回す。
「おい。」
「蓮二が嬉しいこと言ってくれるから。私なりの愛情表情です。」
てっきりすぐに止められるかと思ったが、予想に反してされるがままだったので、普段は滅多に見ることが出来ない後頭部に顎を乗せ、ギュッと抱きしめる。
「蓮二大好きだよ。」
「……俺も、夢子が好きだ。」
大きくて温かい手が背中に回された。