エイプリルフールというなの戦争

 また柳生と仁王に騙され、ボロ負けしたと赤也が泣きついてきたので、可愛い後輩のためにしばらく話し相手になってあげることにした。

「そう言えば今日エイプリルフールじゃん」

 じゃあ騙されても仕方ないね、なんて言って笑ってたら、何を思ったか赤也はすくっと立って言った。

「じゃあ俺も騙してくるっす!真田副部長なら騙せるっしょ!」

 どうやら無事元気になれたようで、赤也はいつもの様にニコッと明るく笑って真田の方へ走っていった。なんとも慌ただしい後輩だ……。

「赤也のやつは」
「ん?」

 急に影になったかと思ったら、後ろから柳が覗き込む様に私を見ていた。

「お前と話すと途端に元気になるな。」
「何もしてないよ。あ、さっきはエイプリルフールだねって話したらイタズラ心をくすぐっちゃったみたい。」

 一個しか違わないのに、子供っぽい赤也に思わず頬が弛む。弟がいたらあんな感じかな?なんて思っているのは、心の中だけにしまっておくことにする。

「そうか。今日はエイプリルフールだったな。」
「そうだよ。柳は嘘ついた?」
「いや。」
「ふーん。」

 長く伸びた前髪の隙間から私の様子を観察しているらしい柳にニコリと笑い、そして口を開く。

「私、柳のことが好きだよ。」
「……それはつまり、俺のことが嫌いということか?」

 いつもより僅かばかり感情を表に出した声で柳が問いかけてきたが、その答えは口に出さず、腕時計を指差した。
 短い針は12時を、そして長い針はそれを追い越していた。

「嘘をついてもいいのは午前中だけでしょ?」
「それはイギリスルールであって……。まあ、いい。」

 小さくため息混じりに息を吐いた柳に、追い打ちをかける様に問う。

「ドキッとした?」
「ああ。」

 クリップボードで隠されて、一見無表情に見えているが、柳の口が弧を描いているのは見なくても分かる。

「してやられたな。」
「やったね。」

 ふふふと勝ち誇った顔をして柳を見ると、柳も同じタイミングで私を見た。

「俺も好きだぞ。」
「へ?」
「お前のことが、誰よりも、好きだ。」

 仕返しとばかりに言われたセリフは、一つ一つゆっくりと丁寧に、しかも無駄にいい声で言われてしまったものだから、追ってやってくる威力が半端なかった。

「ふふ、顔が赤いな。」
「うるさいっ」
「やられっぱなしなのは性に合わないからな。」

 タイミングよく集合の声が掛かり、柳はそのまま私の首をスッと軽く撫でながら呼ばれた方へと向かっていった。

「ぐっ……!」

 触れられたところが暑くて仕方ない。
 今年も柳に振り回される一年になりそうだ。

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