01

 待ちに待ったふくろうが来たのは、雲一つない晴れた日の朝だった。鏡に向かって髪をとかしているときにトンと音がしたので見てみれば、そのふくろうは手紙をくわえてこちらを見ていた。押されている紋章でその手紙の内容がわかった。
 11歳。私にもついに来たのだ。そのときが。

「お嬢様、朝のお茶を持ってまいり・・・お嬢様!お嬢様窓に!」
「わかってるよ、レクシー。もう5分もそこにいる」
「そんな、早く手紙を」
「うん。ただ少し・・・緊張しちゃって」

 この家の使用人であるレクシー・レイバーは、ミルクティーがのったトレイをベッド前のトランクの上に置くと、窓辺に駆け寄りふくろうから手紙を受け取った。ご苦労様と言いながら頭を撫でれば小さくホーと鳴く。それを見ながら私は長い黒髪をひとつに束ね、赤いリボンをかけた。

「ご自分で開くべきです」

 レクシーは手紙を私に差し出して、柔らかく微笑んだ。私の名前が書かれているのを少し見つめ、頷きながらそれを受け取る。
 中に入っていたのは入学許可証で、最初から入っているのはそれだとわかっていたのに、見た瞬間に大きく飛び跳ねた。レクシーに抱きつき、高くキャーキャーと声をあげ、ポニーテールはふさりふさりと揺れる。レクシーも一緒になって騒ぐので、窓辺でとまったままのふくろうも目をギョロリとさせている。

「ついに行けるの!ホグワーツに!」

 ひととおり喜んだあと、ホグワーツへ入学すると返事を書いた。ふくろうに持たせ、何度も必ず届けるようお願いをしながら餌をやった。大きく翼を広げて旅立つふくろうは、青空のなかに消えていく。
 二年前の同じころ、兄に同じ手紙が届いた。兄が荷物を持って初めての旅立ち私も早く一緒に行きたくて仕方なかった。
 兄がホグワーツに行けば、広すぎるこの家で私はほとんど1人だった。もちろんレクシーたち使用人や屋敷しもべはいるけれど、彼女たちは仕事をするためにここにいるのであって、兄がいるのとは意味が違った。
 父は毎日朝から晩まで魔法省で忙しく仕事をしていて、あまり家にはいない。たまに1日家にいたとしても部屋で仕事をしているばかりだ。
 母はもうこの世にはいない。私の物心がつにくより前に病気で死んでしまったと聞いている。母親譲りの黒い髪を大事に手入れするときくらいしか、母親との繋がりを考えることもない。
 兄が休みに帰ってくること、父が仕事から離れどこかに連れて行ってくれること、そして遠くに住む祖母の家にたまに遊びに行くことくらいが、この2年間の私の楽しみだった。
 でも今年からは違う。私も兄と同じようにホグワーツに行って、たくさんの人と一緒に魔法を勉強するのだ。
 その日私は1日中手紙を開き、目で読んだり、声に出して読んだり、みんなに見せたりして過ごした。色とりどりの希望が身体中にいっぱい溢れていた。

 




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