絶対確実一生天使


かわいい女の子が好き。アイドルも好き。私たちふたりの好みは完全に合致している。
依存したい彼女と、依存されたい私。いびつな凸凹はぴったりと嵌まった。

「よくないんじゃないかなあ」

止めなかった立場でこんなことを言うのは卑怯だが、流石に話題が尖りすぎているように思えた。しかしそんな心配は杞憂に終わる。顔さえよければ、どんな要素だってプラスに変換されるこの世の中で、彼女の持っている武器はあまりに強い。私はディスりたいだけのアンチコメントを削除するだけでいいのだ。彼女のファンがもっと増えれば私が手を出さずとも勝手にアンチを攻撃してくれるようになるだろうからこの仕事も今だけだし。
「それじゃあ、♰昇天♰」
同じワードで埋まったコメント欄を少しだけ眺めてからPCの電源を落とす。今からしばらくはぽけったーへの投稿とエゴサーチの時間だから、その間になにか食べたいと言い出すだろう彼女のためにコンビニに行くとする。内面の毒々しさを釣り合いをとるように、彼女は甘いものが好きだ。こういうところで機嫌をとっておかないと、配信をサボられては生活が危うい。人生がどうでもよくなったから配信者のプロデューサーまがいのことをして生きているわけだが、彼女の才能を目の当たりにして活かさないで野垂れ死ぬのはあまりにもったいないと思った。スイーツとスナック菓子で膨れた袋を左手にぶら下げながら彼女のツイートに湧いたアンチを通報していく。イメージを守るためにブロックしちゃダメだよと言った手前、駆除は私の仕事だ。早くこいつらが凍結されますように。

「ただいまー」
「おかえり! ねえちゃんとわたしの配信見てた?」
「見てたよ。今日もかわいいかった」
「えへへ、ピ大好き!」

抱きしめられたからレジ袋を持っていない手で抱擁を返した。今日は同接も多かったし、機嫌が良くて何よりである。

「お菓子買ってきたから食べていいよ」
「まじ! ほんとーにピって最高の恋人だよね」
「これ食べたらもう寝なよ」

良い返事とともに笑顔を見せて、彼女はお菓子の吟味を始めた。こうしていればかわいいのに、まったく扱いが難しいのか難しくないのか、謎な恋人である。
日々は爛れていて、堕落していて、でも悪くなかった。彼女の夢を叶えてあげたいと心から思っていた。だからたまには無理をさせたし、甘やかしたりもした。でも、間違いだったね。



「今日はなんと! 高級マンションに引っ越したよ〜!」

今は違う部屋にいて、彼女が次にどんな企画をするのかなんて知る由もない。一か月で登録者百万人の夢を叶えて、高級マンションに引っ越して、大手の事務所に所属して、彼女は誰の目から見ても成功した。
裏垢の内容を見なければ、私だってそう信じていた。

「あーあ」

有名配信者の彼氏にいいように扱われて、なにも信じられなくなっている彼女の哀れな様子を見て、彼女のフォローを外した。てか、元恋人をブロックせずに今彼のこと呟くってどういう神経してんだ。まあ、私のことなんて忘れてるだけだと思うけど。
このまま行くと、彼女は理想と違う現実に打ちのめされて、きっとおかしくなってしまう。元からおかしかったけど、これは彼女が望んだ姿ではない。元恋人として、最後の情けだ。

「転生しようね、あめちゃん」

次こそお前を幸せにしてやるからな。




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