君に見せない×××


目を覚ます。知らない天井。頭がガンガンする。ガバリと体を起こすともっと頭痛がひどくなって後悔した。どうやら自分はベッドにいるようで、なぜか服を着ていない。ちらりと部屋を見渡して寒気がした。横に左馬刻が寝ている。シーツの外に左馬刻の白い肩が晒されていた。
思わずケツの心配をしたが痛くない。自分が抱かれるような見目をしているとは全く思えないし当然といえば当然だけど。

なんでこうなったんだ。
順番に思い出していく。昨日は仕事に纏まった休みができたからヨコハマに帰ってゆっくりしようとして、その道のりで休憩してたら左馬刻と会って、久しぶりの再会に盛り上がって、事務所まで連れていかれて、それから、どうしたんだっけ。
考え事をしながら左馬刻を見つめていたら、左馬刻の瞼が持ち上がって赤い眼と視線が交わる。相変わらずコイツは顔がいい。

「…起きたなら言えや。ゴソゴソしやがって」
「わ、悪い」
「……んだよ。んなアホ面で見んな」
「いや、だって」

もしかして俺らセックスした?
なんて聞けるはずもなくモゴモゴしてる俺に左馬刻は静かに言った。

「何もしてねぇよ」
「んっ?してないの?」
「飲ませすぎて勃たなかったんだよ」

左馬刻の言ったことが全く理解できない。飲ませすぎて勃たなかったとは。俺を勃たせたかったのか。待てよ。

「え、俺がつっこむ側なの?」
「あ?んだよ、ネコなら先に言っとけよ」
「いやいやそういう訳ではないんだけど。男どうしでセックスしたことないし、ゲイじゃないし」
「だろうな」
「左馬刻は、俺に抱かれたかったの?」

直接な質問に左馬刻は一瞬目を逸らして、小さい声で話してくれた。

「ヤった事実さえできれば良かったからな。酒で俺を襲ったから責任取れって言っても納得するだろお前なら」
「へぇ…」

倫理観も貞操観念もない回答に口の端が引き攣る。だがまぁ、掘られてないだけ御の字だろう。男のケツに突っ込むのもそれはそれで嫌だが、左馬刻は顔が綺麗だからまだマシと言ったところだ。
いや、そもそも何故俺なんかに抱かれようとしたのか。先程言った通り俺はドがつく平凡で金を持ってるわけでも、左馬刻とそんなに仲良くしていた覚えもない。ただの友達だったのだ。最近なんか全く会ってないし。

「左馬刻って、俺が好きなの?」
「…あぁ」
「俺なんか、何も持ってないよ。左馬刻はもっといい人いっぱい選べるじゃん」
「黙っとけ。俺に選ばれることが不満か?」
「そんなわけないだろ。でも、俺は普通のサラリーマンだし、」
「うるせぇ」

怒らせたと思ってビクついた次の瞬間視界が左馬刻でいっぱいになって、唇に柔らかい感触がした。ちょっと時間が経った後唇を離して不敵に笑った左馬刻が言う。

「俺が選んだんだ。黙って俺のモンになれ」
「…横暴すぎないか。俺は左馬刻を友達と思ってたんだ、もうちょっと時間が…」
「じゃあハマに住めよ、そしたらすぐ会えるな」
「話聞いて。あと俺仕事あるんだけど」
「次勃たなかったら俺がテメェを抱く」
「やめてくれ!」

今までで一番悪人の顔をしている左馬刻に、もうどうにでもなれとシーツに顔を埋めた。楽しそうな笑い声が聴こえる。ヤクザこわい。左馬刻もこわい。何より絆されそうな自分が一番こわい。




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