期待値は最大


時計は10時を過ぎたぐらいでまだ浅い時間だが、ここにはネズとその恋人がいて、いつでも熱を上げることはできるような状況だ。
そう、ここのところ仕事詰めだったネズは休めることを嬉しく思う反面、恋人との時間もそれはそれは楽しみにしていた。食事を摂るまではいつもの二人と変わらなかった。だからこそ今からに期待していたのに。
それなのに食事を終えてすぐにベッドに潜り込んで寝る準備を整えだしたなまえを、ネズは殴ってやりたい気分だった。なまえも忙しいことは分かってはいるが、せっかくの休みを寝るだけで消化してしまうことが、ネズはどうしても嫌だった。あまつさえなまえはネズも毛布にひっぱり込んで子どもを寝かしつけるようにぽんぽんとリズムを刻み始めるものだからいよいよネズは声を上げた。

「おい、おいコラこの馬鹿」
「……とんでもないディスだ…………ねむい」

なまえのぼやけた呟きにネズはため息をつく。久しぶりに二人揃って自由な時間があるのに、睡眠だけなんて勿体なさすぎるだろうと、ネズは不甲斐ない恋人を寝かさぬように肩を揺さぶる。

「寝るには早いんじゃねぇですか?」
「ん……だって眠いんだもん.......ネズも早く寝ようよ、隈がいつまでたってもなくならないよ」
「恋人がいるのにこの体たらくかこの野郎」

情事に限らず、映画を観るとか曲の感想を聞かせてもらうとか、やりたいことは山ほどあったのに。それらが全部潰れたことにネズが不貞腐れてなまえに背を向ければ、ようやくなまえが毛布から顔を出した。しかしなまえの声は眠たげなままで、言葉も途切れ途切れだ。

「寝れそう?」
「……恋人があまりに不甲斐ないものでね」
「ふふ、おれがこれで終わる男だとおもうなよ、ちゃんと……明日、ネズと一緒に……」

最後まで言うことなく眠りについた男に、毛布をかけ直してやった。自らも横にぴったりとくっついて目を閉じる。眠るのは明日への投資だ。恋人の想いを無下にするほどネズは冷徹ではないので。


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