定められた破滅へ


話題沸騰していたあのジムチャレンジャーがインテレオンでダンデのリザードンを打ち負かしたその瞬間、スタジアムは静まり返った。次いで割れんばかりの歓声が響く。ダンデが顔を隠すようにキャップを深く被り、笑顔でそれを宙に投げた時周りは新チャンピオンの誕生に沸いていた。

「────負けた」

おれの呟きは、だれの耳にも届かないで足元に落ちて消えた。

暫く、何も手につかなかった。たしかに、おれは新しいチャンピオンに期待していた。ドラゴンストームを打ち破った時、「この子はなにか仕出かすぞ」なんて評論家じみたことを思っていたが、それはあくまでトーナメントを盛り上げる存在への期待だ。決してダンデを負かす人間を切望していたわけではない。───そう、おれはチャンピオンダンデが勝ち続けることを望んでいたのだ。圧倒的な強さで、みんなのヒーローとして……いや、綺麗事だな。負けて欲しくなかったのだ。おれの好きな人に。
ガチ恋、リアコ、言い方は色々あれど、芸能人相手に拗らせたイタイ奴である。ダンデやキバナともなれば本気になる人間も多くいるが、これが十年以上の長い片想いで、しかもおれはダンデと同い年で性別も同じというところが他とは違うところであり、なかなか救いづらいところでもある。
どれだけかっこよくたって強かったって、ダンデは一度会っただけの他人に過ぎないのに。

「よくもまぁ、こんなに好きになれたもんだ」

しばらく献立を考える余裕もなく一週間連続のカレーを煮込んでいたらエレズンが弱く帯電しながらポカポカ殴ってくるのを宥めながらヤドンのしっぽを入れた。
チャンピオンボールのために死ぬほど作ったおかげで唯一の得意料理になりバリエーションも多いカレーも、もう飽きられてしまったようだ。かくいうおれもそろそろ飽きそうなのだが。

「いつか忘れられるかな」

彼のことを忘れたくはない。しかし報われない恋ほど虚しいものはないのだ、悲しいことに。


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