夢はすぐそこに


この寂れた街で、唯一の親友がいない生活は面白みに欠けていた。私が暇だ暇だとシャッター街でスマホをいじっている間に、親友であるマリィはどんどんジムを勝ち上がって、チャンピオンに及ばずともいい試合をしていた。
私はずっとマリィが羨ましい。才能があって、努力もできるんやもん。
久々に帰ってきたマリィと街の外れでのんびり話す。

「マリィがジムリーダーになるん?」
「うん。アニキがミュージシャンば本格的にするらしいけん」
「そっかぁ……寂しくなるねぇ」
「なんで?」

本気で分かっていない顔だ。こてんと首を傾げた姿はずっと見てきたはずなのに、この世で一番可愛く見えた。

「だって、ジムリーダーになるならいっぱい戦わなんし、取材とかそういうのも受けなんとやろ?」
「……なるほど」

そう深くは考えていなかったらしいマリィは神妙そうな顔で頷いた。
マリィはジムリーダーになって、きっといっぱいのファンができる。たくさん活躍するだろう。
じゃあ、私は?

「あーあ、私は何になろうかなー」
「……なまえも、バトルせん?」

意外すぎる言葉に、私はしばらく固まってしまった。マリィはずっとネズくんと一緒に練習していて、私はその横でぼーっとしていただけだ。

「できんよ私には。ポケモンも一匹ももっとらんもん」
「今から捕まえたらいいよ、あたしも手伝うから」
「無理って、どうしたんよ急に近い近い近い」

キラキラした目で距離をつめてきたマリィの肩を押しやって元に戻す。

「絶対楽しいけん!」
「そ、そんなこと言ったって……私には無理よ」
「できるよ。なまえなら、できるよ」

たまにマリィが見せるこの意思の強い瞳が、初めて私に向けられたことに驚きとドキドキで心臓がうるさい。できるかも、なんてそんなわけないのに。そして私はずっと押しに弱い。

「じゃ、じゃあ、やってみようかな」
「うん!」

初めて買ったポケモンボールは、思ったよりも軽かった。


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