籠の中は息がくるしい


どこを見渡しても窓のない部屋。ここの鍵は部屋の主人が常に持っているせいでどこにも行けない。脚に着けられた枷と鎖の繋ぎ目を手持ち無沙汰に弄ぶが、どうにも暇だ。もうそろそろあいつが帰ってくるはずだけど。
床に寝っ転がって真っ白な天井を眺めていたら扉の向こうから鍵の外される音がした。次に、ゆっくりと、おれの主人というか飼い主というか、とにかくおれを閉じ込めた相手が顔を覗かせた。あーあ、きれいなターコイズブルーが濁っちゃって。

「いいこにしてたか?」
「……」
「えらいぞー、さすがおれのなまえ」

おれの言葉を待たずに勝手なことを言っておれの頭を撫でるキバナを極力視界に入れないようにする。いいこにしてたか、なんておれがポケモンにでも見えてんのか。ジムリーダーと番人に加えおれの世話もするなんてワーカホリックかよ。

「ほら、ご飯食べような」

そう言ってキバナは鎖を外し、おれの手を引いて部屋から連れ出した。おれが居たのはキバナの家の一室で、食事の時だけ部屋の外に出してくれる。キバナは料理が上手い。でもテレビは置いていないし、窓も締め切られているので何も情報は得られない。完璧な監禁はおれから逃げる意欲も奪っていく。感情が死んでいく。

「……今日は静かだな」

それでも尚黙ったままのおれに笑いかけ、スプーンに料理を掬っておれに差し出した。ぱくりと食べればもっと笑みが深まる。美味い。最近カレー多いな。
咀嚼しながらふと、ここに閉じ込められる前のことを思い出した。ポケモン達と流行りのキャンプをしたり、バトルしたり旅をしたりしていたあの日々は、どれくらい前だった?

「……何を考えてる?」
「…………むかしの、ぅぐッ」

スプーンが床に落ちる音と首の圧迫感。垂れた目が吊り上がっている。

「おれさまのこと以外考えなくていい。おれだけ見てればいい」

苦しい。これは好意の振りをした独占欲だ。
なぁ、おれたち友達だっただろ。


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