お前の為に生きてやる
※死ネタ
いつも、俺を見つける奴がいる。仲間たちと勝負して最後まで俺だけが残ってる中、そいつだけは俺を見つけ出す。誰からも気づかれたことはないし、おれは誰からも見えるはずないのに、いつも目が合う。
「おい、お前、俺が見えるのか?」
「見えるよ。綺麗な髪だね」
怪しんで初めて話しかけた時は俺の痛みきった髪を褒め、固まった束の中に指を入れてきた。案の定引っかかったから、「ほら、どこが綺麗だよ」と言ってやれば、次の日にどこから持ってきたか知れない櫛で俺の髪を梳かし始めたからさっさと逃げた。
次の時はたしか、俺に支給のライ麦パンを分けてきた日だ。ほとんどくすねるように取ってきたパンはやっぱり硬くて、またスープに入れようと思ったら横から薄汚れた腕が伸びてきて俺のパンを取り上げたのだ。
「あっ、おい! 何すんだ!」
「これおれにちょうだい、こっちをあげるから」
そして差し出されたパンのは明らかに柔らかそうで、焼きあがってまだそんなに時間が経っていないようだった。思わず手に取ればやはり柔らかくて疑いながら口に入れた。久々のまともな食い物は美味くて、ありがとうと言えばにっこり笑ったから変なやつだと思ったんだ。
それからよく話すようになって、結局おれに気づく理由はわからなかったが、友人と呼べるものができた。
このことは絶対に言ってやらなかったが、嬉しかった。嬉しかったのに、
「おい、何で喋んねぇんだ」
揺さぶっても揺さぶっても、その瞼は開かない。何でかなんて分かってる。戦いの中にはありふれたことだ。俺たちはこんな体で戦っているんだから、弱った心臓なんかすぐに消費してしまう。
源石と同じ色の瞳が見えないのがどうしようもなく不安だ。いつもみたいに俺を見ろよ。揺さぶる力も無くなった時、なまえの口が動いた。
「イーサン、生きなきゃダメだぞ」
それだけを言って二度と動かなくなったなまえをゆっくりと地面に横たえて歩き出した。
希望もないこの世界でそんなこと言う意地悪の為に、早くここを抜け出さなければ。
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