枯れゆく花が


※死ネタ


「生きて、しのぶ」

死にそうな今、こんな言葉を思い出した自分の脳は本当に馬鹿だと思う。私はたった今、役目を全うしたというのに。

いつもケラケラ笑っていた。鬼狩りの才能がなかったから、私たちの中で一人だけ隠になった。いつも姉さんと私の真ん中にいた。そんななまえは簡単に死んだ。姉さんが死んだ後は知らないうちに私の拠り所となっていた。それを知ったのは悲しいことに、彼女が死んだ後だった。
なまえが死んだのは隠として生きていたせいではない。ただの流行病にかかってあっさりと死んでいった。小さな変化のひとつでも言ってくれたらその病気に気づけたかもしれないのに、彼女が血を吐いているのを見るまで何も知らなかった。怒りや悔しさの篭った強い言葉で問い詰める私に、泣きそうな顔で笑ってごめんと言った彼女にやるせなさで私も泣きそうになった。

「ごめんね」

もう一度言って、彼女は目を閉じた。もう眠るのか。日に日に睡眠時間が長くなっている。目覚めなくなるまで、あとどれくらいなんだろう。姉さんも、なまえも、私を置いていく。

「そう思うなら、長生きしてくださいね」
「そうね、もっと役に立たなきゃ」

こういう時ぐらい、私のためと言ってくれたらいいのに。

「ええ、貴女は鬼殺隊に必要ですから」

私のために生きてと言えない私も馬鹿だ。薄く笑って夢に落ちていった彼女が亡くなったのは三日後だった。一言だけ遺して、安らかな顔で死んで行った。


ずぶずぶと、恐怖が私を呑み込もうとする。大丈夫、私はやりきった筈だ。仇はとった。鬼殺隊の為になった。私の毒が簡単に分解できるものか。あぁでも、どうしてこんなに怖いのだ。姉さん、カナヲ、なまえ、皆のために、私は何を遺せばいいの。

「生きて、しのぶ」

暗闇のなかで、もう一度なまえが言う。貴女の皆で花を見た時の顔が見たいの。思い出したいのは貴女の死に顔ではないのに、いつまでも消えてくれない。


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