お気に入りで繋ぎとめておくの


インテレオンは困惑している。自分の左手の薬指に付けられたキラキラと光を反射させるラメパウダーの散りばめられたピンク色のマスキングテープは、どうも自身には似合わない気がしてならない。インテレオンの指を飾りつけて満足気な顔をしているのは自分のパートナーの子どもであるなまえだ。なまえが母親から買い与えられたそれにとても喜んでいるのを見ていたインテレオンは、なまえの行動の理由がわからない。
インテレオンの脚にまとわりつきながら、小さな子どもが楽しそうに話すのを、なまえの母親が微笑ましそうに眺めている。

「あのね、好きな人にはね、ゆびわをあげるんだって」

おてて貸して。その声に素直に手を出すインテレオンの手に、もう一つマスキングテープが嵌められた。水色のこれもこの前買ったばかりだ。まだほとんど使われておらず分厚いテープはちょうどインテレオンの指にぴったりだ。

「でもね、ゆびわって、どこで買うかわかんないからママに聞いたら、こどもじゃ買えないんだって。だからね、おとなになるまではこれでがまんしてね」

インテレオンはまるで自分が指輪が欲しいと駄々を捏ねたとでも言うようななまえの口振りに、何か言い返したかったが黙っておいた。なまえが自分の言葉を理解しないと知っていたし、何より子どもに言い返すほどインテレオンは知能が低くない。

「ぜったいとっちゃだめだよ」

このまま付けっぱなしにしておくとなると、このテープ達は水で二度と使えなくなってしまうだろう。それを理解していないだろう子どもは嬉しそうに笑っている。きっと人間とポケモンの婚姻が認められていないことも知らないだろう。
助けを求めるように向けられたインテレオンの視線にパートナーであるはずの母親は笑みだけを返した。子どもの願いは叶えてあげたいし、きっとインテレオンもなまえのことを気に入ると信じているので。
何だかいたたまれないような気持ちになって、インテレオンはひとつ鳴いた。


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