ないものねだり
私にピンクが似合わないことなんか知っていた。私の肌は小麦色で、化粧品売り場に行けばオレンジやらゴールドを進められる。好きな色と似合う色が違うなんてよくあること。でも私は許せなかった。
「いいなぁ」
真っ白の肌と紫色の目はフェアリータイプユニフォームの淡いモモン色からビビットなピンクまでなんでも似合う。羨ましい。どれだけ日焼け止めを塗ったって、ファンデーションを重ねたってこんなに綺麗な白にはならない。
私の羨望の眼差しを居心地悪そうに、しかし黙ってビートは受け入れていた。チャンピオンにはあんなに反発するくせに、私はまるでその価値もないって言われているみたい。でもずっと見つめ続けていたらさすがにビートも耐えられなくなったみたいで、ちらりと私に視線をよこした。
「……なんなんです。さっきから」
「言ってもわからないわ」
「そんなの、言われないとわからないじゃないですか」
ビートはムッとして言い返した。まぁ、これは私が十割悪いから仕方ない。謝る気にはなれないけど。
「選ばれたあんたには、わからない」
この言葉にはビートも言いたいことがあったらしく、つり目がいつも以上につり上がって私を見た。そのよく立つ口が動くより、私が次の言葉を言う方が速かった。
「もう二度と、なりたいものになれないんだよ。あの人だけだって、決めてたのに」
聡明で美しく、上品な立ち振る舞いに、ああなりたいと思った。サインも貰ったことがあるし、クイズも全問正解できる自信がある。ママに貰ったニンフィアとバトルの練習もたくさんして、来年ジムチャレンジに挑むつもりだったのに。なのに、色だけで決められちゃそもそも私に勝ち目なんて無いも同然じゃない。何のためにフェアリータイプを集めたんだ。今更手放せないよ。このぽっかり空いた穴はどうしたらいいの。どうしたら、あの人みたいになれるの。
「いい、なぁ」
ほとんど涙混じりの私の声に、ビートは何も言わなかった。
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