ラフレシュ討伐

クオリア
定期試験 チーム干支



「強化魔法、かけおわりました」
 エミーリアの声が耳に届く。体の中から溢れ出そうな感覚が心臓を早く動かせる。強化魔法はすごい。普段の何倍も早く動けるし、力が出せる気がした。
 前衛には俺と、クソ失礼なヴェリオ。後衛には、守りながら下がらせたエミーリアとオーレリーが並んで支援している。オーレリーの弱体魔法のおかげで装甲は薄く、エミーリアの強化のおかげで体の力は増している。負ける要素がどこにもなかった。
「……ちっくしょ、この蔦ウゼェな!」
「奇遇だな、同じこと考えてたわ」
「あ? 嬉しくもなんともねぇよ」
 舌打ちが聞こえたが無視をする。こいつに構っている暇はない。近づけば近づくほどその悪臭が鼻をつんざくようだ。ヴェリオも同様に感じているようでひたすら顔をしかめていた。エミーリアはいい匂いだと言っていたが、正気を疑う。
「おいテメェ」
「ヴェリオだ」
 いちいち嫌味な野郎だ。ここが試験会場でなければ面倒で殴っていたかもしれない。右手に持った鉄パイプを握りしめ、心を必死で落ち着かせる。
「……ヴェリオ、テメェ飛べんだろ? とどめはお前が刺せ」
 集合した際、なんとなく聞いたことがあった。ヴェリオは植物の扱いに長けているらしい、と。俺では目の前の魔物を、ひたすら殴り続けるという作戦しか思いつかない、けどこいつなら。
 少し驚いたような視線をこちらによこした野郎を睨む。
「んだよ」
「意外だな、お前が止めを刺すと言うのかと思ったが」
「適材適所って言葉知らねーのか?」
 奴は何も言わず、上空へ飛び立った。彼を追う蔦を、鉤爪で切断しながら。
「オーレリー! 蔦をどうにかできるか」
「あんまり戦うのは得意じゃないよ」
「少し鈍らせるだけでいい。エミーリアも、協力してくれ」
「は、はい! 頑張ります!」
 二人の呪文とほのかに漂う魔力を背中に感じながら走り出した。やることはやる。俺がやるべきことは陽動だ。できる限りラフレシュの視線をこちらに惹きつけ、ヴェリオがとどめを刺しやすくする。
 真正面から走りこんで行くのは得意だった。目の前に迫る俺に、一切ひるむことのないラフレシュはその蔦のほとんどをこちらへ集中させる。
「……っ、分離」
 もっていた鉄パイプを半分に分ける。金属性の魔法だからできることだ。半分の大きさになった二本の鉄パイプを両手に構え、迫る蔦をなぎ払った。ひときわ大きな蔦がこちらに迫っているのが見えた。あれは、さすがに耐えられない。
「クオリア様!」
 エミーリアの声が聞こえたと同時に跳躍する。右手の鉄パイプを大きな蔦に突き刺した。そのまま、その上を駆け抜けてラフレシュの本体へ近づいた。もはや匂いは麻痺している。慌てたラフレシュのほぼ全ての蔦が俺を狙う。足と見られるカマはやたらめったら動き始めた。
「ヴェリオ、頼んだぜ」
 金属性の魔力を込めた鋭く、半分になった鉄パイプを片方、上空のヴェリオに放り投げた。しかめっ面のヴェリオはなお、それを受け取って上空から急降下する。
 それは一瞬のようで、永遠のような瞬間だった。ヴェリオのもった俺の鉄パイプが、ちょうどラフレシュの頭の中央に突き刺さる。急降下の際、ほとんど翼を使わなかったせいでかなりの負荷がかかっていたようだ。地面にのめり込むほど形を崩したラフレシュはそのまま息絶えた。
「……ウェ……む、無理……」
 集中力が切れた瞬間に押し寄せた吐き気は、俺とヴェリオ両方を襲ったようだ。喜ぶエミーリアとオーレリーの声を聞きながら、俺たちは一緒に軽く嘔吐した。

定期試験;チーム干支
オーレリーくん(@KaEdE0928_s)、ヴェリオくん(@Alice967_kikaku)、エミーリアちゃん(@hitako_puranna)お借りしております。
(終わり方がひどくて申し訳ありません;;)
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