「……シズメ儀?」
「うん。今日は亡くなった人を弔ったり思い出したりする日なんだよ」
夕焼けがもうすぐ終わる頃、夕飯の買い出しに行こうと部屋を出ると、いつもより少し浮足立つような雰囲気が学校の内部に広がっていた。
偶然出くわした都子に何があるんだ? と尋ねると彼女はそう説明してくれた。聞いたことがある。国ごと、種族ごとに文化は違えど、この時期には死者を弔う行事を行うらしい。どうりで都子の服装も普段とは違ってくらい色をしているのだろう。周りの生徒たちも明るい服を着ている人は少なかった。
「ちょうどアイゼンでの救援依頼がひと段落した頃だから、結構みんな参加するんじゃないかなぁ」
「具体的には何するんだ?」
「森の近くで提灯流しはするみたいだよ」
「ふーん」
自分には関係のないことだ、と割り切れるほどできている人間ではない。じゃあね、と手を振って都子はどこかへ向かって行った。左手にぶら下がった袋の中の夕飯が、少しだけ動いた。
*
生徒たちがわらわらと集まる中、一人。フラフラと森の奥へと歩いていく。今日はうるさいデルタを部屋に置いてきた。できることならアイゼンに向かって、集合墓地にでも行きたかった。ジジイがあの事件で死んだこと。それはずっと俺の中でわだかまりとなって残り続けている。
唯一と言っていいほどの、知り合いだった。行きずりで世話になった人たちは何人もいた。けど、継続して俺の世話を焼いてくれたのはジジイだけだった。あそこに行けば必ずジジイはいた。……唯一の、居場所だった。
森を進んでいく。不思議と魔物たちはでてこない。この学園の島の、東の端にそれはある。テトイの生徒たちの、集合墓地だった。
俺以外にも昔からこの学園にいた生徒が既にきていたのか、瑞々しい花束がいくつも置いてある。
この墓の中に眠る魂たちを、俺は知らない。でも。俺はあの時知ったのだ。人が死ぬことの悲しみを。絶望を。
墓標の前に立つ。やり方なんて知らない。ただアイゼンの集合墓地で誰かがやっていたのを思い出し、そっと手を組んだ。指先一つ一つに力を込める。
ここに眠る魂も、ここに眠る魂を偲ぶ人々も、皆安らかに眠って欲しい。いつか自分のしたことを認められるように。
都子・バレンシアちゃん(@jJSQNOnDxELEzOK)