大ナマズ

レイ
定期試験チーム大ナマズ


 寄せ集めのチームメンバーは試験当日、各々の配置について試験開始を待っている。
「作戦通りに行くよ」
 デラシネさんの声が聞こえた。ああ、と頷く。彼の魔力のこもった折り紙が、俺やドーラ、ウィステさんの体につけられていた。
 ミードラ。水竜にも似たその細長い姿の、動きは素早く数多の目を持つ魔物。今回の戦闘試験で俺たちが倒す対象だった。試験場所はゲート付近の水辺。特別に召喚されたミードラはうっすらとその影を水中に忍ばせていた。教師が張り巡らせた結界の中にいるのは俺たちと魔物のみだ。
Dia della terra,Dia del cielo. Dare quel beneflcio天の神よ、地の神よ。我にその恩恵を与え給え
 静かに基本詠唱を唱えた。次の詠唱に備え、意識を集中させる。
 基本的にミードラは水中で活動する。今のメンバーは全員が地上生活者であり、俺に至っては翼が邪魔で水の中で動くこともできない。ドーラはカナヅチだという。ではどうするのか? 作戦会議で話し合っていた時、全員の意見が一致したのを思い出す。
「フェーズワン。水上に飛び出させる」
Scuatendo la terra揺れる大地
 ゴゴゴゴという音とともに大地が揺れ始める。今回は範囲を絞って水底のみを揺らしている。その間にウィステさんが周辺の木々の幹を伸ばし、水の上に次々と足場を作っていった。その上にぴょこんと飛び乗ったドーラがウキウキしたような笑顔で登って行く。
「足場気をつけてね」
「だいじょーぶ!」
Fioritura di fioriterra咲き乱れし土の花
 ドーラが適度な高さまで登ったところでミードラのいるであろう場所めがけて土を隆起させる。簡単に言えば水底から押し出すのだ。あと少し、あと少し。
Coagulare il nostro signore凝固せよ我が主
 水底の隆起をさせながら水辺の土を集め、ドーラと同じ高さまで持っていった。いくつもの土の塊がドーラの周りに浮き始める。
 そろそろ額に汗が滲んできた。同時にいくつもの魔法を使うのは容易なことではない。瞬きすら許されないほどの集中力を求められる。息が荒くなる。そんな俺の様子を見たデラシネさんがもう一つ、折り紙を俺の背中につけた。それはちょうど翼と翼の間。ジワリと全身に広がるように力がみなぎる。これが、強化魔法。
「悪いな、レイ。もう少し耐えてくれ」
 ウィステさんに答える余裕すらなかった。上がってこい、早く。目を閉じた。集中力をさらに高める。もはや目の前に水底があるかのように、イメージした。隆起を激しく。ミードラの位置を予測して、うねるように追いかけた。
 それは永遠のような時間だった。
「今だ!」
 ウィステさんの声にハッとする。まるで別の場所にいたかのような感覚から解き放たれると同時に詠唱を唱えた。
Les cialo giuその身を降らせ
「最初で最後の一発です!」
 間に合った、とホッとする。水中のウザさに耐えられなくなったミードラが一気に飛び上がる。ここからがフェーズツー。蛇のような胴体が暴れないよう、的確に一つ一つ土の塊を落としていった。その隙を縫ってドーラの拳がミードラの脳天に直撃する。グェ、とカエルが潰れたような声を出してミードラは泡を吹き、水面に体ごと叩きつけられていた。
 ……にしても、女の子ながら拳一つであの怪物をのすのはなかなか尊敬に値する。
「わ、わー! 落ちる!」
 支えるものを失ったドーラの体が水面に向かって落ちて行く。
「任せろ」
 ウィステさんが小さくつぶやいた。先ほどまで空にあった幹が意思を持った生き物のような動きでドーラの体をそっと捕まえ、陸に戻す。ストン、と地に足をつけたドーラはホッとしたような表情をした。
「終了! チーム、大ナマズ。お疲れ様」
 教師の声とともにフィールドに展開されていた結界が剥がれた。素直に歓喜するドーラやデラシネさん、ウィステさんがハイタッチを求めている。そっと手を出すとドーラは勢いよくばちん、と手を叩いた。少々ヒリヒリする痛みも、どこか楽しかった。

チーム大ナマズ
デラシネさん(@jJSQNOnDxELEzOK)
ウィステ・アリオトさん(@Do38_write)
ドロシー・カーターちゃん(@nmdr_o)
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