「よっ、と」
夕暮れ時。暗くなる前に森を出ようと帰路に着いていた。突然現れたマネルを前に、特に動揺することもなく燃やし尽くした。僕の姿が熱さで溶けていく、歪んでいく。見ていて気持ちのいいものじゃない。
つい高火力で燃やし尽くしてしまったようだ。消し炭になったマネルだったものを踏み越え進もうとした、その時。後ろだ。振り返らなくてもわかる。初動が遅れた、もろに攻撃を食らうだろう。おそらく僕の姿をしたマネルが近づいている。誰かに入れ知恵でもされたのだろう。このマネルには知能がある。
次に来る痛みや衝撃に構えたが次に来たのは別の衝突音だった。
「…………ちい?」
目の前には見覚えのある針金。数本まとまって僕の前に防壁として出現しているものと、一本マネルの首に巻きついて致命傷を与えているものが見える。僕の顔が絞首によって青白くなっているのはこの際、目をつぶろう。
木々の間から出て来たのは予想どおり、ちいだった。ニコニコと微笑みながらこちらへ寄って来る。少し首を傾げてこちらを見つめるのはきっと大丈夫? の意だろう。
「大丈夫。ありがと」
死んだマネルには興味がないように猿の姿に戻ったマネルを踏んでいる。感謝の言葉の代わりに頭を撫でようと背伸びをした、その時。
僕とちいの間にクナイが飛んだ。とっさにちいの針金が直撃を防ぎ、クナイがすんでのところで地面に落ちる。ミラージュか? とその攻撃の主を探したが、そこにいたのは案の定僕だった。正面からでもわかる、黄色い尻尾が見え隠れする。
「ウザすぎ、なんなのアレ」
ちいが少し困惑したように僕とマネルを見比べた。どっちが本物? と聞いているようでもある。本当はわかってるくせに。軽く小突くふざけたように笑った。
「さっさと殺して帰ろ、ちい」
うん、と頷いたちいが針金を伸ばした。木から木へと次々に飛び移る僕のマネルを捉え、四肢の皮膚に細い針金がどんどん食い込んでいく。あれ、あのまま締め付けたらいつか腕も足も取れそう。呑気にそんなことを考えながら火の玉を作りあげた。
「サンキューちい」
そのままマネルを燃やす。ちいの針金ごと溶けていった。できるだけ燃やしたくないな、僕の顔もちいの針金も燃やしたくない。どうやら疲労のせいでうまく魔法の制御ができなくなっているようだ。火力の調整ができなかったせいで、すっかり灰になったマネルの亡骸が上空から雪のように降り注いだ。嫌な雪だ。
「ごめん、針金の先っちょ溶けちゃった」
問題ない、とでもいうように笑ったちいを屈ませる。夕日がここまで届いていた。今度こそ感謝を込めて頭を撫でると嬉しそうに笑った。
ちいくん(@utatane__zZ)と共闘