短い悲鳴のような声が耳に入った。もしかしたら誰かが魔物に遭遇した悲鳴かもしれない。勘を頼りに木々をかきわけて声の主を探した。もう人が死ぬのは見たくない。
「おい、大丈夫か!?」
少しひらけた場所、そこにはクローの制服をまとった生徒が腰を抜かして化け物と対峙していた。その化け物はどこか浮世離れしていて俗にいう幽霊のような雰囲気を感じる。魔力は微小、特に屈強な雰囲気も持っていない。ただ少し爛れた顔と異常なほどひょろ長い胴体がアンバランスで不気味だった。
「ミラージュか」
「ひっ……! オメさ、見破れんのけ?」
先ほどまで俺には気付いていなかったようで彼……? は少し驚いたようにこちらを見た。
「おう。お前の怖いもんってのがこれか?」
確かにそれは不気味ではあるが、そこまで強そうではない。殴れば死ぬんじゃないだろうか。たいていの生き物がそうであるように。
「つか、なんだこれ?」
「昔本に出できたお化けです! たまに夢にも出でぐる……」
「ほーん……」
鉄パイプを握り、未だ彼を狙い続ける化け物に向けて腕を振り上げた。特に無抵抗なそれに対して鉄パイプが触れる直前。動きは止まらざるを得な苦なる。
「っ、なんだこれ……っ」
悲鳴のような声。おそらくこれは歌のようなものなのだろうが、ひたすらに不協和音と高音が耳をつんざく。弱体効果があるのではないかと思うほどにそれは体の自由を奪っていった。
「その本の中でアレはどんなやつだった?」
「歌を……いまみでえに、歌を歌っでだです。そんで動けなくしで、そしたっくれ……」
何かとてもおぞましい結果が待っていたのだろう。そこで口を噤んでしまった彼は少し震えている。
「わかった。お前、なんの魔法が使えんだ?」
「軽く木ー動かしたり回復したり、です!」
なるほど。あまり攻撃特化のタイプではないらしい。なら俺が突っ込んだ方が良さそうだ。未だに名前も知らないが、ここで会ったのも何かの縁だ。最後まで付き合おう。
「なっかなか体動かねえな、クソ……ッ」
「解毒ならできます!」
そういって彼が俺の体に手をやると、若干の魔力が体内に流れていくのがわかった。体が徐々に解放されていく。すっかり元どおりになった体を軽く動かした。
「お前すげえな! こういうのからっきしだからよ……。よし、これでいける」
「おねげーします!」
「任せろ!」
うるさい歌声は止んでいる。正面から化け物と対峙し殴りにいった。今度は歌声の邪魔は入らず、あっさりとその頭に鉄パイプがのめり込む。見た目通り質量を持っていなかったそれはぐしゃっと潰れあっさりと絶命した。
「……こんなもんか」
「意外と弱かったんだなヤ……」
「幽霊なんてそんなもんだろ。怖いのは見た目だけだ」
座り込んでいた彼に手を伸ばし、その体を起こした。引き上げた手でそのまま握手をする。
「俺はクオリア・エルベール。お前は?」
アムちゃん(@uchaginZ)と共闘