目の前でセルレアとサラスヴァティが一度目の猛攻撃を経て佇んでいた。
「動きが素早い。デタラメに攻撃してもおそらくは避けられるだろう」
今回の討伐対象であるフレアリザドは周囲を警戒しながらたてがみから尻尾にかけて炎を上げていた。念のため見つからない場所に揃っているため、すぐに攻撃を仕掛けてくることはないだろう。
「簡単に言えば、セルレアと俺で動きを止めてサラスヴァティが止めを刺す。魔法属性的にも最短距離のはずだ」
「僕は賛成。あんまり美味しそうじゃないけどね、アレ」
「俺も構わない。できる限り死角から攻める」
無言で頷くとサラスヴァティは周囲の岩場の影を通ってどこかに隠れた。セルレアの動きに合わせて石を砕きながら攻めればなんとかなるだろう。
「レイ、行くよ」
「ああ」
己の弱体用の毒をナイフに塗り込み終えたセルレアがフレアリザドの前に飛び出した。
「
Les ciao giu」
周囲の岩を浮かせフレアリザドの上空へと運ぶ。落下魔法を唱えた瞬間に上空の岩に気づいたフレアリザドが上空へと炎を吹いた。……ん? ほんの少しの違和感を感じながらも、その隙をついたセルレアがナイフを腹の内側に入れ始めていた。徐々に動きが鈍くなって行くフレアリザドを確認するとセルレアは前線から退く。ここまでは順調だった。
「サラスヴァティ!」
「了解」
俺たちでさえどこに隠れていたのか気付かなかった彼が、岩陰から飛び出す。フレアリザドに向けて選び抜かれた手の武器の切っ先をまっすぐに向けていた。
その時。
「
Gemiti le mie ali」
声を出すよりも前に体を動かしていた。フレアリザドのたてがみから尻尾にかけての炎が止んでいる。彼は気づいていない。いや、今気づいているのは俺だけかもしれない。セルレアが何かを叫んだ。聞いている暇はない。サラスヴァティの今の位置では、十分全身を燃やされる範囲だ。フレアリザドの動きは鈍い、でも準備ができるくらいなら……。
俺を見たサラスヴァティが驚いた顔をしたのを最後に、タックルの様に彼をその奥へ突き飛ばした。硬い岩場が翼や肌にかすれる。ワンテンポ遅れて、先ほどまで俺とサラスヴァティのいた場所にフレアリザドの口から吹かれた炎が轟々と燃えていた。
「な……」
「フレアリザドは炎を吹くとき、たてがみから尻尾にかけての炎を消すんだ。準備のようなものだ。さっき気づいた」
あの場からそのまま攻撃していたらサラスヴァティは怪我どころで済まなかったかもしれない。ようやく状況を認識し始めた脳が心臓の鼓動を早める。よかった。
「二人とも、まだみたいだよ」
「……ああ」
セルレアの声にハッとする。フレアリザドの動きは鈍っているものの、まだ息の根を止められてはいない。立ち上がったサラスヴァティがもう一度構えた。
「支援する。とどめを頼む」
セルレアの弱体魔法によってだいぶ弱っているフレアリザドはすでに動くのもけだるげだった。おそらく先ほどの攻撃は残りの力を振り絞ったものだったのだろう。
かけだしたサラスヴァティが跳躍する。
「
Fioritura di fioriterra」
足場を作るため、できるだけ柔らかい岩を砕いて彼の足元に当てた。彼が走るのに合わせて動かして行く。フレアリザドの頭の真上に移動した彼の武器が振りかぶり、見事に脳天を突き刺した。
ひどい悲鳴。のちに、その魔物は動きを止めた。
「お疲れさま」
「お疲れ、二人とも」
地面に足をつけたサラスヴァティの元へセルレアとともに向かった。サラスヴァティは少しだけ口角を上げた。
「ああ。アンタら……いや、レイ、ありがとう。セルレアも」
小気味いいハイタッチの音が響く。
定期試験チーム:水弱眼鏡
メンバー:サラスヴァティさん(@Kina_mochi)、セルレアさん(@homu_o)