「ヤシさん?」
人でごった返すフィールドの中。特に誰かと戦闘することなく、しかししっかりとフィールドの地面を踏みしめている。不安げな表情がパッと振り向いて、安堵の色が差し込まれる。
「参加されてたんですか。あんまりしないタイプかと」
「知り合いがいるけぇ、来たけど予想より怖いがや……」
「ああ……みなさん最後の時間だから弾けてらっしゃる」
「はじ……弾けて?」
すぐ近くで戦っていた生徒の片方が激しく吹っ飛ばされた。ヤシさんの後方では土がえぐり取られ、俺の後方からは爆発音が聞こえる。清々しいほどに混沌、そして治安が悪い。ヤシさんが怯えるのもなんとなく理由がわかるほどだ。しかし確か、彼……否、彼女とも呼称できるこの人は防御力がひどく高かったような気がする。
「ひぇぇ、なんでこんなに殺意高い……」
「勝とうと思ってるんでしょうね。十時と十三時はアッカが優勢でしたから、さしずめ最後くらいはと頑張るクローと、それに対抗するアッカという図でしょう。白熱するのも納得できます」
ちゃっかり俺の背後に隠れたヤシさんはキョロキョロと周りを見回す。台風の目のように、周囲が騒がしく戦闘を繰り返す中、俺たちにはまだ誰も戦いを挑んで来なかった。
「戦闘を好まないのであればクローの後衛にいるのをお勧めします。時間まで……」
その時、ヤシさんの視線が俺の背後に移った。俺の腕を引っ張り地面に伏せさせると彼女は腕でアッカ生の攻撃を防いだ。鈍い衝突音に振り返ると、彼女の硬い腕と知らないアッカ生の鈍器が交差している。
「あっとろし! 危ねかった[D:12316]……」
「いや目の前に敵いるんですが……」
不意打ちの攻撃を防がれたアッカ生は一度距離を取る。構え直したからにはまた戦うつもりなのだろう。ヤシさんは防御に出した腕が痛むのか振りながら大丈夫? と俺の腕をとった。彼女が防いでくれなければもろに攻撃を食らっていただろう。
「防御なら任せんさい! その代わりレイくん戦ってな」
「了解です」
殺意丸出しのアッカ生と対峙しながら、腕を上げた。不安な防御面をヤシさんがカバーしてくれるならやりやすいことこの上ないだろう。なんだかんだと言いながら前線にいてくれる彼に感謝しながら、基本詠唱を唱えた。
修練棟 16時の部
ヤシさん(@zzzzuaco)お借りしました!