Hello,roommate

Mahiro & Kriemhilde
同室記念




 僕がひとり部屋になってから、どれほどの時間が経っただろう。僕はずっとここにいる。あの子が死んで、帰ってこなくなったこの部屋で何十年間も一人。
 学園側から、新入生と相部屋にならないかと連絡が来たのはつい最近のことだ。これまでも何回かその申し出はあったが、なんとなく断っていた。だから今回承諾したのもなんとなく、なんとなくだった。
 あの子のものは既に片付け、必要なものは祖国に送っていた。一度だけ彼女の両親から手紙が来たけれど返事は書かなかった。僕はあの子の人生を看取ったわけではないから。最期の少し前に同じ部屋にいただけだから。
 生き物はいずれ死ぬ。僕も死ぬ。あの子だって、生きながらえてもいつか死ぬ。卒業する。テトイも、人生も。わかってるからこそ深く関わるのが怖かった。
「そろそろか」
 自室の時計を見て体を起こした。ぼんやりと、ほんの少しだけ残っていたマツリカとの思い出の品を眺めていたら時間が経っていたらしい。立ち上がって引き出しにしまう。
 元々ものの多い部屋ではなかった。僕のものは最低限の家具と、それなりな数の私服。これはこっちに来てから商業棟でかき集めたものだ。選りすぐりの私服は、最近着る機会もだいぶ減ってしまった。外に出ないせいだろう。他にあるのは教科書と、筆記具くらいで。長い間授業に出ていないから教科書は随分白茶けてしまった。
 黙ってそれらを眺めていると、コンコンとドアがノックされた。おそらくは今日から一緒になる同室の子だろう。
「はーい」
 ドアを開ける。何も知らされていなかった僕はどんな子だろうかと少し浮き足立つ気持ちが抑えられなかった。影がはっきりとした色彩を持った時、意外過ぎるその姿に目を瞬かせた。
「今日から世話になるぞ!」
 元気よく笑った彼女は僕より遥かに低い身長をしていた。白銀に紅色の差し色が入ったツインテールを揺らし、私物であろう荷物を携えてニコニコと笑っている。
 勝手に、いや、彼女に罪はないのだが、勝手に前の同室者のようなイメージを抱いていたせいでなんだか拍子抜けした気分だった。気持ちを立て直して今一度彼女を上から下まで眺める。
「うん、合格」
「なに?」
「なんでもなーい。僕は茉紘。アンタは?」
 可愛いものが好きな僕にとって彼女の容姿は問題ないどころか、合格点以上だった。可愛いを具現化したような彼女を部屋に招き入れる。可愛いものや人が可愛い子に集まるのは当然だ。ほんの少しの運命を感じてその後ろ姿に視線を投げた。
「妾はクリームヒルデ・クロイツァー。ヒルデで良い。よろしく頼む、茉紘!」
「ん、よろしくね」
 さて、今から彼女に部屋の説明をしよう。なんだか楽しい日々になりそうだ。

茉紘とヒルデちゃん(@Kina_mochi)同室成立記念!
見た目詐欺同室万歳
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