うちの子にご飯食べさせて!
「おいっ、下ろせ!」
「うるせーな大人しくしろよ」
ギャーギャー叫びながら暴れるヴィンスを肩に担ぎ、クローの寮を歩いていた。修練場の帰り。偶然足を怪我して動けないヴィンスを見つけ、せっかくだからと運んでやっているのだ。むしろ感謝してほしい。
暴れながらも律儀に道案内するヴィンスの声に従いながら廊下を歩く。しばらく行くといくつも同じような扉が並ぶ中ヴィンスの名前が書かれた表札が見えた。
同室者がいるはずだと言われていたため、部屋のインターホンを押す。しばらくして中からドアが開けられた。
「はい、どちら様……って本当にどちら様」
あっけにとられてる同室者を押しのけ、部屋の中に入る。
「おい! もういいってば!」
「はいはいそこのソファに降ろすっつーの」
半分投げるように降ろすとヴィンスはぎゃっと叫びながらそこに収まった。呆気にとられている同室者に向きなおり声をかけた。。
「なぁ、おい。アンタ」
「エラルド。エラルド・バックフォードと申します」
「おう、俺はクオリア・エルベール。よろしくな。で、なんか湿布みてぇなのねえの?」
エラルドはどこにやったかな、とぼやきつつ探しに行った。
鼻をひくつかせる。この部屋に入った時から感じていた甘い匂いの出所を探った。見かねたヴィンスがため息と一緒に口を開いた。
「粗方、エラルドがお菓子でも作ってたんだろ! そんなに気になるならキッチンの方見てくるがいい」
お菓子、という単語に反応してフラフラとキッチンに近づく。そこには作っている途中の何かが置いてあった。見たことのない形でわからない。
「湿布ありましたよ。クオリアさん?」
「おーありがとな。ヴィンスに渡してくれ。……なぁ、これなんだ?」
ヴィンスに湿布を渡し終えたエラルドが続きを作るために隣に立った。
「マカロンというお菓子です。甘くて美味しいですよ。クオリアさんも食べます?」
「いいのか?」
「どうぞ。あっちで待っててください」
嬉々としてソファの方へと戻った。ヴィンスの方は見向きもせず、ひたすらにキッチンを見つめていた。
*
「うっまぁ〜〜〜〜!」
出来上がったマカロンを一口、口に含む。サクッとした食感の後にもっちりした生地が広がり、次いで甘さがじんわりと浸透して行く。あまりの美味しさにほっぺたが落ちそうだ。
「ふん! 俺様の部下はすごいだろう!」
「お前、すげえなエラルド! こんなの簡単に作れるなんて!」
「無視か!」
相変わらず喚くヴィンスは置いておいてもう一つマカロンに手を伸ばした。エラルドは少し遠慮がちに微笑んだ。
「ありがとうございます」
徐々にヴィンスと競うように皿の中のマカロンを食べ続け、それなりの量があったはずのそれらはすぐになくなってしまった。まだまだ全然食べ足りない。少し寂しい思いを抱えながら空になった皿を見つめていた。
「カフェラテを入れます。クオリアさんも飲まれますか?」
「飲む!」
立ち上がったエラルドがふと、思い出したようにこちらを向いた。
「ヴィンス様を届けてくれたお礼に、これからいつでも食べに来ていいですよ」
「エラルド! こんな奴……!」
「ほんとか!?」
ヴィンスの言葉を遮って思わず立ち上がっていた。はい、と頷いたエラルドに飛びつきたくなる気持ちをぐっと抑え、ありがとな! と満面の笑みで叫んだ。
ヴィンセントくん(@inuinu_1111)とエラルドさん(@rui_252F)とクオリア