「あ、いた。やっぱりここか」
喫煙室を覗くと、案の定彼女……ロイアン・アゼンドはそこにいた。細長いタバコを蒸かしながら、口から白い煙が糸を引いて吐き出される。
交流祭スタンプラリーは毎年、そんなに本気になるつもりはない。見つけられればいいかな、程度だし、そもそもの目的が交流祭を楽しむためのオプションなのだからゆっくりでいいのだ。どうせ回っていれば自然と集まっているし。
こちらを見た彼女の視線が一度伏せられて煙草を脇へ置いた。煙など一切気にしないのにも関わらず、気をつかってくれているようだ。
「はんこ、ちょーだい」
「そんなにわかりやすいかしら」
彼女は持っていたスタンプを取り出して僕の台紙に押してくれる。もっとたくさんの生徒がここに訪れたのだろう。彼女は大抵、授業のない時はここにいる。
「アンタがヘビースモーカーってのは有名じゃない?」
「そう……。あなたは毎年来るわね、どこにいても見つけてくる」
そんなに例年来ていただろうかと記憶をたどれば、確かに思い出す限りこの教師捜索のスタンプはロイアンから貰っていた気がする。魔法学は火属性だし、それ以外でなにか繋がりがあるというわけでもないのだが、彼女の元へ来てしまうのはきっと彼女が美しいからだ。
「アンタはわかりやすいのよ。だから来ちゃう。きっと、来年も」
「卒業はしないってこと? 仮にも教師の前でよく言うわね」
「アンタが生きてるあいだはここにいるんじゃない? 寿命、知らないけど吸血鬼なんだから長いでしょう」
彼女は何も答えなかった。ただ微笑んで、もう話すことはないとでもいうかのようにまた煙草をくわえるだけだった。火が消えかかっていたのに気づいて、ほんの少し火をつけてやると、彼女の艶やかな瞳がこちらを見て少しだけ動いた。まるで感謝を示すかのように。
置きっぱなしだった台紙を持って喫煙室の出口へ向かう。じゃあね、の言葉も告げず、それでもきっと僕はまた来年の今頃ここに来ているのだろうと思う。白い煙がほのかに甘い香りを漂わせ、鼻をくすぐった。
交流祭スタンプラリー:教師捜索
ロイアン先生と、ほんの少しの会話。