見ないで
7度目の一年生を迎えた。自己嫌悪はもはやない。ただ、今年も希望に溢れた新入生を見るのが絶望的なだけだ。
いつだってそうだ。この学園は希望に満ち溢れている。僕だけが暗闇の中で一人、取り残されている錯覚に陥る。
ほんの少しだけそんな感覚を緩和してくれるのは、去年と同じ顔ぶれだった。ほとんどが進級した中で、理由はどうあれ留年した彼らを見ると穏やかな気分になる。……といっても、ほんの少しだけ。
話したことのない人なんてざらだった。僕はいつも一人だし、それでいいと思ってる。
「亞にぃに!」
ぼんやりと次の授業のことを考えていた僕の目の前に彼女は現れた。だいぶ背丈が低い僕よりもさらに低いところから僕を見上げている。
ユールヒェン・ハーゼ。ピンクの髪を揺らして、はじけるような笑顔を顔に貼り付けている。いや、それが彼女の純粋な笑顔であることは分かっているのに、ひねくれている僕の心情は信じようとしない。
「どうしたの、ユール」
彼女もまた、留年仲間だった。戦うことから逃げてる者同士自然と話があって、クラスは違えど時折ユールは僕に話しかけてくれるようになった。それがほんの少しだけ嬉しくて、ユールの姿が見えると期待する。
「なんでもないの。でも、亞にぃに……」
「最近のユールは楽しそうだね」
ユールは感情の色が見える。話しかけてくれるのは嬉しいけれど、俺の感情は見ないで欲しかった。何か言いかけた彼女に対して慌てて口を挟む。少し嫌味のような口調になってしまって後悔した。
「……? うん、楽しいの。亞にぃには楽しくないの?」
楽しい? そう、よかったね。ユールはいつも楽しそうだもんね、僕はそんなユールが見てて好きだよ。
「ユール、そろそろ授業始まるよ。教室に戻った方がいい」
ユールには見えてるのかもしれない、僕の動揺も負の感情も。まだ何か言いたげなユールの背中を押すようにチャイムの音が鳴った。もう一度、ほら、と促すと彼女は教室を出ていく。
「……僕は、生まれてから一度だって楽しいと感じたことは無いよ」
頭に響くようなチャイム音に紛れてボソリと呟いたその言葉は、誰にも届かない。
ユールヒェンちゃん(@Na_zak1)と亞