刹那



 ぴょこぴょこと揺れる亜麻色の髪を見つけた。あの後ろ姿はきっと彼女だ。一つ下の自称ナース。
「ミーイーコ」
 後ろからぽん、と肩を叩くと僕より少し高い背丈の彼女がパッと振り向いた。
「茉紘ちゃんー!」
「なにしてんのー? 授業中だけど」
 相変わらずの笑顔とともに名前を呼んでくれた彼女の隣に立った。連れ立って目的もなく歩き出す。ミイコと知り合ったのは少し前だが、彼女の持ち前の可愛らしさに僕が一目惚れした。彼女も独特なセンスを持っていて、話を聞くのは楽しい。
「あのね、実験してたんだけど疲れて息抜きしてる」
「また怪しげな実験? ほどほどにね。暇なら商業棟行こうよ」
「行くー! 茉紘ちゃん、今度こそお洋服見に行こ」
 しょうがないなぁ、と笑う。自分の性自認について真剣に考えたことは……いや、もう忘れてしまった。僕は男だけど、可愛いものや可愛い子は好きだった。綺麗、にも似ている。実家で理解されなくとも、ここならいくらでも受容される。それに同じ趣味の仲間も見つけられる。居心地が、いい。
「ずっと話してたけど時間取れなかったもんね」
「うん、ずっと行きたかったんだよ! あ、あとめちゃくちゃ可愛いカフェも見つけたから行こ?」
「嘘、知らない! 行きたい! さすがミイコ」
 楽しみー、とはしゃぐミイコを横目に少しだけ微笑んだ。
 ミイコはミイコでいつも楽しそうだし、学校は学校でいつも通り動いている。あまりにも平和だからすぐに忘れそうだけど、この日常がどうしようもなく幸せだと思った。
「僕もミイコの服選びたい」
「いいよー! お互いにお互いの選ぶー?」
 できることなら、壊れなければいいのに。



ミイコちゃん(@helpme_die)と茉紘