唸りを上げた、目の前に佇むヘルハウンドはじりじりとこちらに近づいてきていた。どうやら奴の狙いは真っ直ぐに先ほどの生徒のようで、サッとその生徒の前に立ちはだかる。
「かなり好戦的のようだね」
「戦闘は免れないかと。ただいまより、データスキャン開始します」
頭の中で駆動音が鳴る。まず味方三人の体を瞬時にデータ化した。この場にいる動ける人間で前線に行けるのはリリーと和音だろう。すでに構えた二人の背後に回り、背中に触れた。強化魔法を流し込む。
「弱点は木属性です。さらに具体的な弱点は見当たりません。普通に殺せば死にます」
この中で弱点をつけるのはリリーとユールだ。小さな体ながら、真っ直ぐにヘルハウンドを見つめて武器を構える彼女も立派なテトイの生徒だった。
「っ、来ます!」
お互い睨み合いながら出方を伺っていた、その時。最初に動いたのはヘルハウンドの方だった。狙いは私たちではない、背後にいる生徒だ。
「行くわ」
「出るよ」
動いたのは和音とリリーだ。正面を和音の槍が、右横にリリーのチェーンソーが回り込む。目を突き刺すように槍が貫き、ヘルハウンドは動きを止めた。知能はそこまでないのだろう、回避を知らないようだ。リリーのチェーンソーは足を狙ったようだ。が、装甲が硬いのかうまくいっていない。
「にぃに、危ない!」
ユールの声と同時にリリーが背後に飛ぶ。間一髪、先ほどまでリリーのいた場所には深い穴が空いていた。
「ありがとう、ユール」
「お二人とも、作戦があります。一度戻ってください」
声と同時に戻った二人に作戦を簡潔に説明する。貫通された顔の痛みに喘ぐヘルハウンドが一つ咆哮した。その場にいる全員に簡易シールドを張った。多少の攻撃なら防げるだろう。
「アルねぇね、ユール……」
「ユールがやらなければ成功はいたしません。大丈夫、あなたなら」
不安げな彼女の肩に手を添えって強化魔力を流し込んだ。これならだいぶヘルハウンドの攻撃力を削げるだろう。
作戦通り散った二人の位置を確認する。ユールに頷いてみせると、彼女は一度ぎゅっと武器を握りしめた。
「い、行くよ……!」
ユールの声と同時に周囲の木々がざわめきを始めた。何もなかった地面からは瞬く間に木が生えてくる。少し開けていたはずのその場所は、あっさりと樹海になる。ここからはもうリリーと和音の感覚だ。彼らならきっと大丈夫だろう。データがそういっている。
目をスキャンモードに変更する。生い茂った木々の中、一つ蠢く姿があった。
「同期、開始」
私の目で捉えた映像を特攻二人のシールドと同期する。今、きっと二人はシールドの表面に映る、私の目と同じ映像を見ているだろう。やったことのない魔法ではあったが、隣にいるユールのシールドにも同じ映像が流れているから大丈夫だろう。
和音が動いた。構えた槍は動きを止めるため後ろ足二つを貫く。鬱蒼と生い茂った木々のおかげで周りが見えていないヘルハウンドはあっさりと動きを止めた。その隙をリリーが見逃さない。先ほどの短時間で毒、そして木属性も付与していたチェーンソーで体を切り刻み始めた。
今回の作戦はそれだ。土が豊富なこの場所では、魔法によって回復すらされてしまう。できるだけスピード重視ですぐに決着をつけなければ長期戦に持ち込まれるだろう。
大丈夫、数値化したデータは嘘をつかない。不測の事態が起きたのなら、いざという時には私が動く。背中の斧に手を添えて動向を見守った。
運カス共闘ミラージュ第二作品目
和音さん(@r_playing_9)、ユールちゃん(@Na_zak1)、リリーさん(@Kina_mochi)