戦闘、開始

茉紘
雪下りの街



 一面の銀世界、とはこのことか。吐く息がほのかに白く濁る。転送ゲートを通って一瞬でグラヴィニアへたどり着き、最初の一歩を踏み出した。さく、という音とともに足跡が雪に記される。はしゃぐ生徒、寒いと嘆く生徒、様々な生徒が楽しそうにあたりを彩っていた。
 寒さは感じないものの、見た目が寒そうかと思って……否、半分以上は可愛い眠期用の服を着るという目的だが、制服色のポンチョを制服の上に羽織っていた。襟元にベージュのファーがついていて、ボタンは同系色だ。今年改めて買った眠期服でお気に入りの一つである。
 雪の温度は感じられる。気体の温度も、何度くらいかはわかるものの寒さには繋がらないだけだ。しゃがみこんで足元の雪にそっと触れると、それはふんわりと指先に溶けた。ごっそり手に収まる程度を取り上げ、ほのかに手に熱を加えてぎゅっと握ると、それはそれなりの硬度を持って手のひら大の球になった。周囲を見回す。生徒はまばらで、雪の積もった木が一定間隔立っている程度だ。投げても誰にも当たらないだろう。
 右腕をそっと振りかぶって白の世界に雪玉を投げた。誰にも当たらないだろうと思っていたそれは、タイミング悪く突如現れた赤い人物に見事命中してしまった。
「あっ」
 短く声を出すと、その人物はじろりとこちらを見やる。見事に顔面に命中してしまったらしく、メガネに雪がこびりついていた。
「お前……」
「なんだ、可愛い一年生かと思ったら赤丹じゃん」
「ふざけるな! 人に雪玉当てといてその態度とは……!」
「怒んないでよ。わざとじゃないんだか……ぶっ」
 しゃべっている最中にあろうことかこの野郎が僕の顔めがけて雪玉を投げつけた。さして硬くはないものの見事顔を冷やしやがった雪玉は一瞬で溶けて液体になる。
 赤丹。アッカの五年生でやけに偉そうなやつだ。同じ火属性だから多少の面識はある。噂によると人をからかったり、揚げ足とったりするのが趣味らしいが、反面怒りっぽいのかもしれない。
「ふっ、仕返しだ」
 顔を少し斜め上にあげて見下すように僕を見た彼に、そうかと頷いた。
「そっちがその気なら僕もやってやるよ」
 無属性魔法で周囲の雪を浮かせ、雪玉を自動で作っていく。魔法さえ使ってしまえば当てるのなど簡単なのだ。こちらの動きを見た赤丹もまた、同様に雪玉を生成していく。どちらが先に倒れるか、これは火属性の誇りをかけた戦いだ。互いに互いを見つめたまま、その戦いは始まった。

 視界にキラリと煌めくものがあったが、二人はそれに気づかない。

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来て早々に赤丹さん(@crjuil)と超魔法雪合戦を始めました。欠片集めなんてそっちのけです。
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