心電図

アルミリア
定期試験



 ドロンの背中を見据える。木の上にいるのは私とユール、その下にアムとアージュラがいた。木々の隙間、まだドロンから私たちには気づかれていない。
「アージュラ、強化をお願いします。私は敵の弱点を」
「……フン、了解」
「データスキャン、開始します」
 瞳の中にドロンを閉じ込めた。ドロンの体全体を分析していく。土でできているというのは本当のようで、ゴーレムのように魔力が内側でくすぶっている。弱点と言える弱点はないかもしれない。強いていうのならあの体を真っ二つにすること。
「【本よ】」
 アージュラが唱えた言葉とともに持っていた本がパラパラとめくられる。
「【一章・強化の陣】【第三節全体強化】」
 淡く青く光ったページが私たちの姿を取り囲んだ。体の中で何かが増えていく感覚が沸き起こる。心臓のコアがドクン、と波打った。
 ドロンの動きはその巨体ゆえ遅い。こちらもそこまで早く動ける生徒が揃っているわけでもないから互角だろう。このチームではサポート役がほとんどのせいで火力が少し足りないだろう。アージュラの強化のおかげで少しは上がっているが、工夫しなくてはならない。ドロンを持久戦に持ち込むのはこちらに不利な点が多すぎる。
「どうするの? アルねぇね」
「いくつか考えましたが、成功率は五分五分かもしれません」
 少し不安な表情になったユールを慰めるようにそっと肩に手を置いた。彼女の特技は主に樹海生成。ドロンの弱点はつけるが、攻撃力はそこまで高くない。もう一つ、可愛らしい矢があるが……。
「一発で仕留めるのがこちらにとっても楽かと思われます」
「賛成だな。長引くのは好かない」
「オレも賛成です!」
 木の下から声がする。アージュラも前線に出るのは好かないだろう。知り合いの戦い方と少し似ている。アムの魔法は主に撹乱に使えるかもしれない。
「作戦を説明します」
 このメンバーで、今できること。これならきっと大丈夫だ。



 木の上から降りてアムと隣に並ぶ。ドロンの背中まで数メートル、未だドロンはこちらに気づかない。近くの木の上にはユールが、私たちの後ろにはアージュラが立っていた。
「準備はよろしいですか?」
 各々の返答を耳に捉えた。アムと顔を見合わせて頷く。
 背中の斧に手をかけて走り出した。自身の足に簡易的な強化魔法をつけ、そのまま跳躍する。ドロンの頭の高さまで飛び上がり、斧を真上から振り下ろした。私の斧は軽い。そこまでの攻撃力を持たないが、ドロンをこちらに振り向かせることには成功した。
「アム!」
「はい!」
 周囲の木々の葉っぱが揺れた。風に乗ってドロンを襲う。巻き込まれないようにその場からすぐに離れた。頭に攻撃を受けてすぐ次の攻撃を食らったせいか、アムの居場所を突き止めるのに苦労しているようだ。どこからかわからない攻撃に右往左往していて地面が揺れていた。
「お願いします、アージュラ!」
「言われなくてもわかっている! 【四章・拘束の陣】【第十三節 拘束】」
 アージュラからドロンまでの最短距離を魔力で作った輪が飛んでいく。手や足にぶつかったそれはあっさりとドロンの動きを止めた。もがくドロンの力が強いのか、アージュラの表情が少し歪む。
「ユール!」
「はいなの!」
 ユールが木陰から飛び出す。木の上ということを忘れていたのか、その体は空中に浮いた。しっかりと狙った弓矢は動きを止めたドロンの心臓部に綺麗に突き刺さった。落ちているという状況を理解していないのか、ユールの攻撃は続く。突き刺さった弓矢からドロンの体全身に広がるように木の根が張り巡らされた。唸り声をあげたドロンの体にヒビが入り、そして。
 その最後を見るよりも前に体が動いていた。魔法の発動が遅すぎたせいで浮遊魔法も間に合わない。ユールが地面に落ちるすんでのところで滑り込み、彼女を受け止めた。
「……お疲れ様です、これにて戦闘終了です」
 動きを止め、彫刻のように固まったドロンを前に四人の笑顔が咲いた。

定期試験チーム:心電図
アムちゃん(@uchaginZ)、アージュラさん(@aosan_sousaku)、ユールちゃん(@Na_zak1)
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