伸ばされた手

アルミリア
交流祭



 交流祭の店舗を巡りながら、自分が味を感じられないことを悔やんでいた。きっと味を感じられる人達は楽しめるだろうに。
 腕章を下げながら、しかし回ってもいいと言われているおかげであらゆる店舗を覗き込みながら歩く。ある程度種類別に立地もわかれているようで、飲食店舗の先にゲーム系店舗があった。
 そのうちの一つ。なぜ自分が目に付いたのかわからないが、それでも少し気になる店舗があった。エルフの青年が表にたって呼び込みをしてたり、店舗の奥で女の子が料理をしていたりする。数名のお客さんが、店員と談笑しながらささやかなゲームをしていた。
「そこの! このヴィンス様の店舗によっていけ!」
 私を指しているのだと気づくまで少し時間がかかった。私ですか、と目で尋ねると彼は大げさに頷く。時間もあるし、いいかと彼に近寄った。
「ここは?」
「む、お前、風紀部か! まぁいい。ここは簡単なゲームができる出店だ。ポイントに応じて景品もあるから遊んでいけ!」
 まず、と通されたのは射的だった。
「いらっしゃいませ、こちらでは自身の魔力を弾に込めて射的をしてもらいます! あの風船を壊してくださいね。色によって点数が違うので高得点目指してみてくださいね」
 ふわふわとした水色髪の毛をゆらした少年が三発の弾を寄越した。言われるがまま、多少の魔力を込めて狙いを定める。
「三回可能だぞ!」
 いつの間にか隣に来ていた、表のエルフが笑っていた。
 浮遊魔法で三つ弾を浮かせ、そのまま発射させる。一発目は黄色の風船に見事命中し、小気味いい音を立てて割れた。
「ナイスです! まずは四点入りました」
「いいぞ、その調子だ!」
 やたらと応援してくれる二人を尻目に残りの二発もなんとか当てた。全弾命中すると、自分のことのように喜んでいる二人を見てなんとなく、不思議な感情が浮かんでしまう。ただ漠然としたよくわからない感情で、言語化できるのはいいなぁ、ということくらいだった。
 水色の髪をした彼に点数を書いてもらったシートを受け取り、エルフの青年と共に次のコーナーへと移動した。
 そこには、黒い髪を一つに束ねただいぶ小さな青年と片眼鏡をかけた青年が並んで待っている。距離が近いから、もしかしたら恋仲なのかもしれない。
「そち、よくぞ来られた! ここではこの腕相撲マシーンと腕相撲してもらうぞ!」
「主に時間と勝敗で点数決まりますからね」
 目の前にはドロンの絵柄の書かれた腕相撲マシーンがある。手を指定の場所に入れ、構えた。
「よーい、スタート!」
 掛け声と同時に腕に負荷がかかった。思ったよりもそれは重く、腕の力と拮抗した後やがて押し負けた。機械に機械が負けるとは、なんとも面白い図だ。
「残念。ポイントはこちが記そう」
「惜しかったな! あとは景品交換だ」
 ここがどうの、とかあそこがどうの、とか、三人で話しているのを見ていると、やはり先程の感情が蘇った。いいなぁ。
 シートをもらって景品交換ブースへ行く。ブースの中に入ったエルフの青年がシートを受け取ってゴソゴソと漁っていた。
「景品はヘルハウンドのパペットだ! 使い方はわかるか?」
「ええ、こう、でしょうか」 
 渡されたぬいぐるみを手に嵌めてぱくぱくと口を動かした。彼は満足そうに頷いていて、少しだけ私も嬉しくなった。
「ありがとうございます。楽しかったです。その、皆さん、とても仲良くていいですね」
「そうだろう! 俺の部下達は優秀かつ仲良しだからな!」
 ふんぞり返って笑う彼は、本当に誇らしげに思っているのだろうと思った。ああ、そうか。あの感情は羨望。そして、ささやかな欲。あんな風に楽しめたらいいのに、というほんの少しの欲だ。私がそこに入れなくても、せめて、彼の名前くらいは聞いてもいいだろうか。
「失礼ですが、お名前を伺っても?」
「ヴィンセント・グレイ。いずれ世界征服する男だ! 今は部下を集めている」
 ヴィンセント・グレイ。声を出さずに反芻する。楽しそうに笑う彼は言葉を続けた。
「お前の名前は?」
「アルミリア・バーナードと申します」
「そうか、アルミリア。お前もあくのそしきの一員にならないか?」
 思いもよらない提案と共に差し出された手を、喜びを隠さずにとった。

交流祭店舗:Bad Hangout
ヴィンス様(@inuinu_1111)のあくのそしきに加入させてもらいます!
他、店員さんとしてハイドくん、日照くん(@4673kanata)、タカキくん(@jJSQNOnDxELEzOK)お借りしてます。
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