Flan

アルミリア
定期試験 Flan




 学園東側。巨大な土の塊はその巨体を揺らして森の中をふらふらと放浪している。木陰から様子を伺いながら、作戦を頭の中で反芻した。
「データスキャン、開始します。それぞれの特性を生かした強化を行います」
「ありがとうございます……! アルミリアさん」
 おどおどと困ったような表情を少しだけ柔らかくしたフェリが淡いピンクベージュの耳と髪を揺らして微笑んだ。愛らしく動く触り心地の良さそうな耳に触れたくなる気持ちを押さえ込み、マスクの下で少し笑った。
「これほどしか私にはできませんから。みなさん、作戦通りに」
「了」
「当然よ! 行くわ!」
 自らをアンドロイドという少女、ナナヨと少し高飛車なエルフの少女、ルトレが意気込んで前を見据えた。く、と息を飲んだフェリの魔力を感じる。周囲の木々が急成長を始め、枝葉が伸び始めたのと同時にナナヨとルトレが走り始めた。
 こちらにドロンが気づく。フェリが動かした枝葉は、動こうとしたドロンの体に巻きついた。木属性の魔力が込められているおかげで弱点をつけているようだ。
「ナナヨさん!」
 巨大な鉤爪を振りかぶり、動きが止まっているドロンへ切り掛かった。いささか硬いドロンの体はそれでも鋭い彼女の鉤爪によりえぐられていく。
「あの……、大丈夫でしょうか、みなさん……。私たちはこうしてここから、見ていることしかできないですし……」
 魔法の維持にそこまでの労力は伴わないのか、視線は獲物から外さないままに彼女が呟いた。前衛はルトレとナナヨ、後衛が私とフェリという典型的な戦術をとってこの試験に臨んでいた。私は強化、フェリは弱点をつける魔法とともにドロンの動きを止める。適材適所かつ、ベストな作戦だと思ってはいるが、たしかに人の戦いぶりを見ていると少しだけ不安になる。
 私は二年生に上がっているが、フェリもナナヨもルトレもまだ一年生だった。つまりは初めての定期試験ということで、皆少しだけ表情が硬い。
「大丈夫です。あのお二人はとても強い」
 ナナヨが抉った部分はごっそりとドロンに穴を開けている。痛みを感じるかどうかはわからないが、攻撃されたことを理解したドロンは暴れ始めた。フェリの表情が険しく変わる。慌てて彼女に再度強化用魔力を流し込んだものの、ドロンの動きはさらに激しくなっていった。
「フェリさん!?」
「ご、ごめんなさい……! ドロンの動きが、あまりにも激しくて……!」
 ハッとした瞬間にはもう、彼女の動かしていた枝葉が断ち切られていた。強力な一撃がルトレめがけて降る。
「ルトレさん……!」
 足を広げて踏ん張る態勢をとった彼女が、下側から勢いよくハンマーを振り上げた。一度力が相殺されて動きが止まったように見えたその二つの衝突は、次にものすごい衝撃波と音を解き放った。
「……っ」
 よろめいたフェリの体を支え、粉塵の先に見えたのは粉々になったドロンの腕だった。ぽかんとしたアホヅラのドロンの動きが一瞬止まる。
「フェリさん、今よ!」
「は、はい!」
 ルトレが叫んでからワンテンポ遅れて、再度動き出した周囲の木々がドロンを捕まえた。背後に回っていたナナヨが頭めがけてその鋭い鉤爪を突き刺した。同時にもう一度振り回されたルトレのハンマーが正面からその体を打ち付けた。
「いけ……!」
 思わず祈るように声が漏れる。まるでスローモーションの映像のようにドロンの体が粉々になるのをその場からはっきりと目に映していた。
「……お、終わりました……?」
「ええ。お疲れ様です」
 こちらに振り向いた前衛の二人がほんの少し笑っていた。


定期試験 チームFlan
フェリちゃん(@sksk39sk)、ルトレちゃん(@so_ki7bambostar)、ナナヨちゃん(@29am18)
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