「ラグナ、宜しくお願い致します」
「よろしく」
No.106-a-、通称ラグナ。彼女は初めて出会った時そう名乗った。今彼女と二人で魔物棟のフィールドに立っているのは先ほど偶然すぐそこで再会したからである。もとより自分が前衛に立つことがほとんどない私にとって、共闘してくれる人は貴重な存在だ。
彼女にその旨を伝えると快諾し、共に戦うこととなったのだ。
「準備はいいか」
戦闘学の教師、グラの声がフィールドに響く。
「完了」
「同じく」
グラに見えるよう合図を送った。ラグナは携帯していた鉄を精製しなおし、二本の剣を作り出した。
「……アル」
「はい」
「楽しみましょう」
ほんのり口元が笑ったように見えて、少し嬉しくなる。はい、と呟くように口にした。
「No.106-a- ラグナ、アルミリア・バーナード両名の魔物討伐訓練を始める。では、開始ッ」
彼女の声と共に魔物が出現する。目の前に現れた魔物のデータをチェックするのは自然とラグナに任せていた。
「データチェック、開始します。適切な処置を施しましょう」
ラグナの体に触れ彼女の体のデータを解析する。彼女の中のどこを強化すれば彼女の攻撃力が上がるか。瞬時に見つけ、強化魔法を送る。
「アル。周りの”子”を倒せますか」
「可能です。”親”をお願い致します」
会話の途中でラグナの脳が透けるように、メドゥサモレの情報が流れてくる。メドゥサモレは親と子にわかれる。子は親を守るため浮遊しこちらへ突進してくるのが特徴だ。あまり特別な攻撃はしてこないが、今回のアタッカーであるラグナの邪魔にはなるだろう。背中に装備していた己の全長ほどある斧を外し、駆け出す。
「一体目」
鉄製ではあるものの、極力軽量化している斧は振り回しやすい。ばさっと切り倒すとそれは霧のように消えた。親は離れたところでふわふわと浮遊している。ラグナの姿が目の端に映った。
「二体目」
一体目を切り倒したその流れで横に凪ぐと二体目が消える。ラグナが駆け出し、跳躍する。足の強化は真っ先に行った。彼女の核とも言えるところだろう。足に収納されている武器の殺傷能力は高い。飛びながら足先に剣を出現させていた。彼女の方へ気を配っていると、すぐ左側に羽のようなものが映った。
「三体目」
おそらくだが、アンドロイドに死角は存在しない。右手に持っていた斧を左手に持ち替え、そのまま切り捨てた。ラグナの足先の剣がやがてメドゥサモレの親に迫る。はた、と思い出した。メドゥサモレの親は物理攻撃をはじき返すのでは?
「ラグナ……っ!」
彼女が忘れているとは考えにくいが、半ば不安になり声をあげた。その間も半永久的に出現する子を薙ぎ払う。彼女があの位置からゼラチン状のメドゥサモレの本体にぶつかった場合、強化も合間って弾き飛ばされる可能性の方が高い。
「安心して」
彼女の両足が綺麗にメドゥサモレの胴体に突き刺さった。そうか、足に魔力を込めてメドゥサモレの体を突き破ったのか。完全に動きを止めた彼女は両腕を振り上げ思い切り心臓部の核に突き刺した。
奇怪な叫び声をあげてメドゥサモレが消滅していく。周囲を浮遊していた子も一瞬で消えていた。
「戦闘終了。一分九秒。ご苦労」
あまりにも一瞬で終わってしまった。改めて彼女の攻撃力とその素早さに感動する。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
さっと右手を出すと彼女もそれに応えてくれる。ぎゅっと温もりのないはずの握手をしたが、ほんのりとそれは熱を持った。
魔物棟訓練
ラグナちゃん(@homu_o)お借りしてます