交流祭、修練棟出し物イベント。16時の部は、混沌を極めていた。あらゆる場所で地面に開く大穴や、何者かによって生成された樹海。他人に扮することが出来る種族による敵クラスへの擬態や、超火力の広範囲魔法など。
死人が出ないのが奇跡と言えるほど荒れに荒れている修練棟は、なおのことその争いを激化していった。
前線から離れ、後衛に紛れる。少し魔力を使いすぎて疲労が溜まっているようだ。こんな、たかがイベントごとで本気を出すなんて馬鹿らしいと思っていたけど、普段は協力して戦うべき生徒達と相対できるのは僕の内に秘めた炎が燃え上がるような興奮を覚える。それはどこか忍鬼の血、否、炎であるようにも思える。
ふと視線の先に、何者かが現界させたのだろう遮蔽物となる岩がいくつもできていることに気づいた。そのうちの一つから、なにやら碧と青の混じった耳が覗いている。こちらはクローが大勢いる陣地であるはずだからアッカの生徒ではないだろう。
激化する攻撃の流れ弾に当たらぬよう、生徒達の合間を縫って駆けていく。誰かが怪我をしているなら治せるだろう。
人混みに紛れて良く見えなかったが、その後方にはもう一人クローの生徒がいるようだ。何かが飛んで彼の顔に張り付く。真っ白で丸い生き物のようで、どうやら岩陰から見えていた耳はそれらしい。
「……どうな!集うな!」
「ねえ、なにしてんの?」
彼についていたその丸い生き物が今度は僕めがけて飛んでくる思わず腕でガードすると、切なげな目をして地面に着地した。不可解な鳴き声……やたらはっきりとした人語のように「オアァ[D:12316]……」と鳴いている。代わりに、とでも言うように足元にひっついている。だいぶ可愛らしいフォルム、星空を感じさせる色合いの生き物だが、これはなんという種類と言っただろうか。
「お、おお女!?」
「は? 男だけど」
先程まで丸い生き物にひっつかれていた男がたじろいだ。どこかで見たことのあるような顔だ。尖ったベージュに近い髪は揺れることなく、瞳も吊り上がりなかなかに目つきが悪いが、それでもオロオロしている姿はなんとも頼りない。
「……なんだよ、紛らわしいな」
「どーでもいいけどなにしてんのアンタら」
ああ、思い出した。この生き物たちはオツキミ種、と言ったような気がする。男は先程の態度を一変し姿勢を正した。
「コイツを引っ張り出そうと思ってたんだが……」
そう言って顎でしゃくって見せたところには、オツキミ種によく似た……それよりも丸っこいクローの生徒が震えながら蹲っていた。抱えるように金色のスプーンのような武器を握りしめている。
「ねぇアンタ」
「ヒィィす、すいません! ノクターンは敵では……」
「いやそりゃ同じクローだからね。ここに来たからには戦いなさいよ。むしろここにいる方が危ないと思うけど」
え? と彼女が口を開く前に凄まじい音が響く。咄嗟に彼女の服を掴んだ男が崩れる岩から守った。どこから出したのか傘とタライをもったオツキミ種がまた「オアァァァ[D:12316][D:12316]」と叫びながらその周りを右往左往している。
「ったくもう、見てらんない。ちゃんと前を見なよ」
さらに崩れそうな岩を浮遊魔法で押しとどめた。足に感触があってみやるとオツキミ種の一匹が張り付いてる。
「アンタたち、名前は?」
「……木の葉・ウィリディス」
「アンタは」
「ス、スススピカ・ノクターンです!」
対峙したアッカたちを見据え、すっかり回復した鬼火を出現させた。木の葉が隣に並び、後ろからスピカが戦況を伺っている。
「僕は茉紘。この場だけでも一緒に戦うよ、いい?」
「……鬼か。魔法は苦手だが腕力なら任せろ」
「ノクターンもで、できるだけお手伝いします!」
どうにかやる気になってくれたらしいスピカもまた、小さく魔力を使ったらしい。体の中でみなぎる力を感じて、彼女が強化魔法使いであることに気づいた。
「すぐに終わらせる」
「おう」
木の葉が跳ぶ。出現させた鬼火は赤で埋まる生徒の中に青を入れた。足元のオツキミ種が「がんばる」と呟いた。
修練棟16時の部
いっちごさん宅(@icgkkk)スピカちゃん、木の葉くん、お借りしました!
時系列に不都合ありましたらパラレル設定でお願いします。