episode Carl
調子が狂う


いつもと同じだと思っていた。
「あ゛っ、ちょ、まっあ゛うぅ」
 自分でも穴の締め付けが強くなっているのがわかる。足が痙攣して全身に力がはいった。背中を仰け反らせる。精液は出したくても出せる気配がない。またイく。ただの絶頂ではない、いわゆる中イキとかいうやつだ。若干のトランス状態に陥っているのか、腰を振っているヴィゴはイっているのにも気づいていない。悲鳴に似た声が漏れる。やばい。これはやばい。童貞を舐めていた。
 次にやばい、と頭の中で呟いた時、下半身の感覚がなくなると同時に意識も飛んだ。遠くでヴィゴの俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、気にしていられなかった。



 覚醒したとき心地いいシーツの感触が頬を撫でた。視界が明瞭になるにつれて、ベッドの横でこちらを見つめている青肌を見つける。視線がうろうろと彷徨っていた。鼻で笑うと、ビクッと体を震わせる。
「おはよう」
「あ……あの、大丈夫、すか」
「あんまり大丈夫じゃねぇな」
「すいません……」
 図体はでかいのにまるでガキみたいに縮こまったヴィゴは見ていて面白かった。腕に力を込めて体を起こす。下半身は気だるいものの、感覚は戻っていた。布団の中を覗くと体もシーツも綺麗になっている。こいつが片付けてくれたのだろう。
「そ、その、全然出さないから……無理させてすいません」
「あのな、お前中イキって知ってるか?」
「……知らないです」
 床に正座しているヴィゴはいつもより目線が低かった。珍しい。
「出さないでイくってやつ。中イキな。ケツ、めちゃくちゃ締まっただろ? あれ、イってんだよ」
 徐々に青肌が赤みを帯び始めた。釣られて俺まで顔が熱くなる。なんでこれしきのことで恥ずかしがるんだよ。普通に説明してるだけなのにやりづらい。ため息をひとつつく。息を吸い込んだ。
「だからこれからはあんなむちゃくちゃ腰振らなくていいから。気持ちよかったけど」
「あの……どっちの方が気持ちいいんですか?」
「あ!?」
「あっすいません、なんでもないです……」
 ヴィゴはこういうところがある。なんというか、知識はないくせに無駄な奉仕心があるというか。恥ずかしさは頂点に到達しそうだ。察しろよそういうのは。できないのはわかっているけど。
「あー……中イキ? かな。別にどっちでも好きだけど」
「そ、そうですか。わかりました」
「……お前なんなんだよ。調子狂う!」
 ガバッと布団を翻し、ヴィゴに背を向けてベッドの中に潜った。火照った頬を冷ますように瞳を閉じる。まだ疲れているし、もう一眠りしてもいいだろう。背後で若干慌てている気配はするが、罰として放っておこう。


ヴィゴさん ( @crjuil )に中イキとはなんたるかを教える話

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