緑が綺麗な、小さな村だった。子供が走り回っている。菜の花が咲き乱れ、周囲には山々がそびえる。
「−−」
隣には柔らかい微笑みをたたえた女性が立っている。優しく、名前を呼ばれた気がしたけれど聞き取れなかった。何か口を開こうとしても何もいえない。私はただその風景を見ているだけ。
昼間の天気はやがて変化する。暗い闇の中へ、雷鳴轟く豪雨の中へ。巨大な魔物が何体も踏み込んでくる。走り回っていた子供も、隣に立っていた女性も血に濡れてしまった。私は泣き叫ぶ。やめてくれと。それでも声は出てこない。私の耳には何も聞こえない。
これが夢だと私はよくわかっている。なぜならこの闇が終わればまた、彼らは復活して穏やかな昼間を見せてくるのだから。私は永遠にここでその風景を見守ることしかできない。こうして何度も繰り返し、繰り返し、天国と地獄を行き来している。
ふと耳元で水の音がした。コポコポと私自身がどんどん沈んでいくかのような。記憶は混濁していく。覚えていないことを思い出そうとしている。私はだれだ? 今、私はどこにいる。私は? 体はどんどん沈んでいく。しかし不思議と、体はどんどん軽くなっているようだ。ああ、肉が。体から肉が削がれていく。あの時の痛みはとうに忘れてしまった。
そろそろ目覚めろと言いたいのかい、君は。相変わらず無口だね。私は確かにもう数え切れないほどの年を超えて不思議生物として生きているけれど、察しはいいほうじゃないんだよ。でも、そうだね。今は君の呼びかけを都合よく解釈しようじゃあないか。私はもうこの夢から醒めたいんだ。
「……おはようリークイド」
意識が覚醒する。目の前に広がるのは懐かしいとも言えない校舎、そして顔も知らない生徒たちと、私によく似た魔物の姿だった。
5.0 地響きと警告
ガイ目覚め。