再起動

アルミリア
地響きと警告


 幼い姿は、大切な者を治すためにその場を去った。誰かを呼んでくるために。
 魔物の姿はその場で潰えた。あたりにはただ静寂が広がっている。半身を失った機械はその上に愛しい人のローブを被せられたまま完全に動作を停止した。その場所で動くものはただ、風で揺れる木々だけだった。そのはずだった。
 それは一見すれば骨、である。頭の上からすっぽりと骨をまとった和服の異形がゆらりと現れる。いかにも通りすがりと言わんばかりの彼は停止した機械を一瞥した。一見花嫁を想起させるヴェールは暗く、それは何か亡くなったものを思い浮かばせる。
 辺りを見回した彼はふむ、と小さく呟いた。恐る恐る機械に触れたと思えば、真剣に切断面を眺め始める。ささやかなローブは一度剥がされた。
「うん、治るね」
 ワームの口から吐き出された機械の断片が浮き上がる。それは魔法によって形を変え、徐々に元の姿へと戻っていく。ほんの少し手先で回路をいじったのち、それらは本来あるべきところへと嵌っていった。失う瞬間と同じくらいに早く、それらは修繕されていく。
「おーい、起きてる? まだ難しいか。一応治したからね」
 それだけ言うと彼はその場から去っていく。再び静寂がその場に訪れた。

 駆動音。回路復元済。コアのロック解除。魔力を配分します。思考システム復元、二十パーセント完了。嗅覚システム復元完了。聴覚システム復元完了。運動機能の復元開始。視覚システム回復。思考システム復元、八十パーセント完了。開眼。記憶データ確認。全てのデータを復元完了。
 おはようございます。貴方は戦闘支援型アンドロイドA-1、アルミリア・バナード。再起動、完了しました。


 覚醒して真っ先に感じたのは、いつもそばにあった香の匂い。かけられているローブが彼女のものであることを知ったと同時に、なぜか治っていた私の体を認識した。生きている。動くことができる。誰がどうやったかはわからないけれど今すぐ探さなくてはならないことだけはわかる。記憶がまだ混濁している。行かなければ。

匚さん(@shiroyagisan__)に治していただきました。
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