星練りのコンパクトを手に彼女の姿を探す。この前色をもらったお返しをしたい。右腕には彼女からもらったブレスレット型の星練りがついている。
「キティ」
「あら、アル! 奇遇ね、どうかしたの?」
「この前いただいた色の、お返しをしたくて」
存在だけで完成されたキティのどこに色をつけてもその均衡が崩されてしまう気がして、言葉を発した後迷ってしまった。彼女の小物によく使用されているラベンダー色。彼女の美しい髪と同じ薄い亜麻色にするかとも悩んだがやはり彼女といえばこの色だろう。
「まぁ! 本当に? ありがとう」
「失礼しますね」
指先に色をつけて彼女のひょこひょこ動く耳に触れた。ほんの少し主張するだけでいい、彼女の彩りの中にほんのすこし入れるだけでいいのだ。
「ラベンダーの色ね? 素敵だわ!」
「貴方がくれたのも似た色だから。お揃い、かな」
心底嬉しそうに耳に触れる彼女が可愛らしくて胸がほころんだ。表情が動けばきっと今笑っている。
「そういえば、小晶には色を贈ったの?」
「いえ、まだ。その……何色にするか迷っていて」
そもそもこの、色を贈るという風習を知ったのも最近だった。キティから色をもらったとき意味がわからなかった。彼女がとてもうっとりと、嬉々として喋るからなんだか素敵な風習に聞こえてしまって。贈る人は決して多くはないけれど、心を込めて何かを贈るということが大切なのはよくわかった。
「きっと何色でも喜んでもらえるわ。でもそうね、貴方の色が一番なんじゃないかしら」
私の色。何色だろう。自分の色なんて考えたことなかった。キティからもらった小晶の色だけが私を染めているような気がして、やっぱりまだそこはわからない。
二言三言また交わしてキティとは別れた。このままもう一度商業棟にいって、色を選ぼう。
*
「小晶? いますか?」
彼女とキティの部屋のドアをノックする。中から声が聞こえてすぐに彼女が中から顔を覗かせた。
「アル! どうしたのだ?」
「あ、えっと……」
とりあえず、と中に入れられる。小晶とキティの部屋はある程度片付いているものの、一角にあるものすごい祭壇は毎度驚かせてくる。キティが崇拝する先輩のものらしい。だいぶ座り慣れた椅子に座る。向かい側に座った小さな紫頭が嬉しそうにこちらをみていた。
「小晶、右腕を」
「ん? なんだ、なんだ?」
真っ白で細い彼女の右腕が差し出された。彼女のために持ってきた色を自身の唇にたっぷりと塗る。右腕をそっと両手で包み、顔を近づけた。ゆっくりと、その柔肌に唇を合わせる。手首の骨の感触がはっきりと伝わって、唇を離したときそこには綺麗に私の唇の形が真紅と共に記されていた。
「色を贈る日、という風習があるそうで。日頃の感謝を伝えるらしいです。だから……」
ふと、手の中の彼女の腕がほんのり赤らんでいる。顔を見るとぷるぷる小刻みに震え、顔を普段より何倍も赤らめた彼女がそこにいた。何かまずいことでもしてしまっただろうか、もしかして怒っているのだろうか。
「小晶?」
「そ、そなたは、恥ずかしげもなく……!」
「ええ?」
その反応がなんなのかよくわからなくて、それでも彼女の右手が優しく私の両手を撫でるので、まぁなんでもいいか、と思い直してしまった。白い手首に映える紅色はまざまざと光の下で照らされている。
普段からお世話になっている会長さん(@wocarinas)と小晶(@_mizugumo)へ。