うざいくらい長い手紙をようやく読み終わり、机の上にばさっと置いた。イレギュラーに届いたその包みを開く。クソ野郎が無駄に長い手紙を送ってくるときは、どうでもいいことが九割と贈り物についての説明一割と決まっている。
 包み紙の中には黒い箱が一つ。そっと開けると中にはこれまた黒い筒のようなものが入っていた。なんだこれ? そう思いながら先ほどの手紙の最後の方を読む。
「ま……? まんげ、きょう?」
 手紙の中には筒の中をのぞいてみろ、という旨の記述しかなかった。筒を上にしたり下にしたりしてようやく見つけた穴を覗いた。
「う、わぁ……!」
 キラキラと光る色とりどりの柄が、穴の中に広がっていた。何度も覗いていくうちに筒を回せば景色が変わることにも気づいた。すごい。クソ野郎にしてはなかなかいいものを送ってきた。嬉しくて、この景色を誰かに見せてやりたくて部屋を出た。すでに夜も更けていて、あまり屋外に人影はない。
 廊下の窓から外を見上げた。月のない夜だったが、その代わりに数多の星が輝いている。万華鏡ほどのカラフルさはないものの美しさは変わらない。手を筒状にしてそっと覗いてみる。
「くおりん? 何してんのぉ?」
 聞き慣れた声にハッとして後ろを振り返った。少し眠そうな表情をしたミケが不思議そうにこちらを見ている。なんだか気恥ずかしくなって手をグー、パー、と握り直す。
「あー……これ、見てみろ」
 とりあえず持っていた万華鏡を渡す。やはりミケも見るのは初めてなのか、不思議そうに上下に動かしていた。見かねて、ここ覗け、と教えた。覗いてしばらくするとミケの顔がパァっと変わっていく。
「なにこれー! すごい!」
「だろ? 綺麗だよな」
「あ! わかったぁ。くおりん、手をこうして見てたんでしょー!」
 ミケが先ほどの俺と同じように手を筒状にして空を見上げる。先ほどまで明るかった表情はさらに明るく変わっていった。
「わ、綺麗だねぇ……今日はお星様が良く見える!」
「ああ。だな」
 そういえば、と思い出した。手紙の最後につくり方が載っていたはずだ。それだけで無理なら図書室とかで調べれば出てくるかもしれない。俺も、同じようなものが作れるだろうか。
「この星空も切り取っておければいいのにね、これみたいに」
 ミケは万華鏡の中と星空を何度も見比べて笑った。その瞳の色を、できることなら万華鏡に閉じ込めたいと思ってしまった。

万華鏡に入れたいもの

秋の夜長に100題作る会 様より
未満な二人。ある夜の話でした。(17.09.19)

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