「くおりん、次あっちー!」
「わかったわかった。そんな引っ張るなって」
騒がしい生徒の群れの中、はぐれないようにとミケが掴んだ俺の腕が引っ張られる。事前に友達から教わっていたのだろう、ミケはあまり迷うことなく進んでいった。楽しそうにしているミケを見ているのは楽しい。
「そういえばくおりん、前にメメロのミートパイ〜って嘆いてなかったぁ?」
「あー、だいぶ前だけどな。結局食えなかったんだよなぁ、あれ」
「ふふん。そんなくおりんに、ジャーン!」
いつの間に移動していたのか、ミケの背後には『しりあるばー』の文字と木でできた屋台があった。店名の横に設置されているスピーカーからはメメロ三兄弟のテーマ曲が流れている。
「……シリカ?」
そこでせっせと料理をしていたのは同じ学年、同じクラスのシリカ・クレンザーだった。一見、長い髪と明るい色の着物によって女性に見えるが俺はこいつが男だということを知っている。
「よ、いらっしゃい。デートか?」
「言ってろバーカ」
どこかムズムズする感覚を覚えながらメニューを見やる。
「メメロの串焼きか」
「うん! 絶対美味しいよねぇ。くおりん、どれにする?」
メメロの団子のほか、いくつかメニューが載っている。すぐそばに実際の商品の串が刺さっていた。いい匂いが鼻をかすめる。
「クリーム巻き……」
「さっきクレープ食べたばっかりだよぉ」
「く、メメロ三団子もマツオカ肉巻きも捨てがたい……味噌バター串もまた美味そう……」
真剣な表情でブツブツとつぶやきながらメニューを凝視していると、隣でミケが笑い始めた。不思議に思って顔を上げ、視線をミケに移す。
「ふふ、くおりんめちゃくちゃ真剣……、全部買ってもいいんだよぉ」
腹を抱えて笑いながらミケは楽しそうに言った。少しだけ恥ずかしくなって、そっぽを向いた。
「ミケはどれがいいんだ?」
「ミケも迷ってる! だから全部買って食べ比べしよぉ」
「それがいいな」
シリカに全部、というと彼は少し笑ってほらよ、と差し出した。金を払い、二人で二つずつ持つ。
「まいど」
「ありがとな」
屋台から少し離れながらもすでに一本目、妖ノ実とクリーム巻きを頬張る。甘いクリームとバームクーヘンの生地、そして木ノ実の味がふわりと口の中に広がった。
「くおりん、おいしぃ?」
自分はまだ食べず、こちらを覗き込むミケの口に残りのクリーム巻きを押し込む。んぐっ、と突然入れられたクリーム巻きを慌てて咀嚼しながらもミケの顔がパァっと輝いていく。
「美味しい!」
な、と頷いてミケの顔を見る。先ほど少し雑に突っ込んだせいか、ミケの頬にクリームがついていた。何も考えず顔を近づけて舐めとる。ほのかな甘さが舌を通った。
「……どうした?」
甘さに満足しているとミケの顔が真っ赤になっているのに気づく。尋ねてもあわ、あわわとしか言わなくて何かしたかと先ほどの自分の行動を思い出した。……あー、クソ。
全く意識していなかったせいか、今になってじわじわと恥ずかしさがこみ上げる。両手がふさがっていたから仕方なくだ。そう言い聞かせても、なぜかミケに言い訳はできなかった。
選んだのは甘い、
しりあるばーに寄りました。
料理長のシリカ・クレンザーさん(@mi4ro_tw)お借りしました。