はじめに感じたのは衝撃。
痛みは後から遅れてやってくる。体から力が抜けて、痛い、という言葉で頭の中が埋め尽くされていく。声を出そうにも出せなくて、霞む視線の先では姉さんが一歩、後ずさったのが見えた。
胸が熱い。ひどく熱い。燃えている。体が? 燃えている。姉さんの言葉を思い出した。忍鬼の死に様。致死傷を得た忍鬼は自身の炎で焼き尽くされて消えていく。
僕にはずっと、炎がないと思っていた。僕にあるのは忌々しい白い息だけで、姉さんのように簡単に炎は出せない。
ああもう、なんて皮肉なんだろう。いっそ笑ってしまうほどに、僕は嬉しかったのだ。
僕も忍鬼であることを認められているような気がして。
どさっと地面に倒れた。炎は広がっていく。僕を飲み込んでいく。煤竹さんが感じていた痛みはこれと同じだったのだろう。これを耐えて、あの人は生きているのか。関係ないことを僕は考えて少し笑った。
「ぼ……く、も……ほ、の……が……あっ………………きれ……で、しょ……」
頭の中がまとまらない。痛い。痛い。熱い。僕は死ぬのか。そうか。僕は死ぬのか。あれほど望んだ死が手を伸ばさずとも届くところにある。
数少ない、僕を受け入れてくれた人たちの顔が思い浮かんだ。
……先生。ああ、できるなら先生に、もう一度だけ会いたかった。僕の姉さんを紹介したかった。僕は、先生に会わなければきっと、今こうして死ぬことにも喜んでいたはずなのに。
僕は悲しいらしい。死にたくないらしい。今更だ。わかっていたはずだ。僕は自分の中身をいつも見て見ぬ振りしていた。本当は生きていたかった。本当はみんなと同じ景色を見たかった。本当は姉さんと同じようにずっと前だけ向いて生きて生きたかった。それができなかったのは僕が弱いからなのだ。
姉さんは僕が死んで、泣いてくれるだろうか。もう目の前の景色も見えない。音が遠ざかっている。意識だけがそこにあって、闇の中へと落ちていた。
姉さん、僕は、もし、またもう一度忍鬼として生まれてこられるなら、
今度は姉さんのようになりたいです。そしたらきっと、今度は自分を好きになれるから。
亞、ここに眠る。