投票を終えて部屋に戻ろうとしたとき、目の前になにやらうずくまっている生徒を見つけた。大きなスプーンが閑散とした空間の中でただひとつ、きらめいている。
「あの……大丈夫、ですか」
具合でも悪いのだろうかと声をかけると、涙ぐんだ瞳がこちらを振り返った。見れば周りにいたオツキミ種たちがオアーと鳴き声を漏らしている。スピカ、と呼んでいるところからして彼女はスピカという名前なのだろう。
「だ、大丈夫です、申し訳ありません」
「平気ならよかった。じゃあ……」
「あ、あのっ」
彼女の姿をどこかで見たことがあるような気がしたが、そういえば彼女も一年生だったのではないだろうか。教室で何度か見たことがある。随分と大所帯な子だと感心したのだ。彼女の呼び止める声に振り返ると、彼女は不安げな瞳をこちらに向けていた。
「あなたはどちらに投票を……?」
迷っているという風貌ではない。おそらくは投票を済ませたのか、投票先は決めているという感じだ。僕がどう言おうとこの人の決断を歪ませることにはならないのだろう。なら、いい。
「君は?」
「ノクターンは……」
「ごめん、やっぱり、いい。僕は味方に投票したよ」
最終的にどっちになってほしいのか、僕はやっぱりわからない。優柔不断がここにも出ているのかと思いきや、心の中では彼らに殺されたいとも思ってしまう。僕は死にたくない、死にたくないけど生きていたくもない。自害もできない僕の血……炎じゃ、この先生き続けるのは苦しすぎる。彼らの仲間になりたい。仲間になって、正当な理由で殺されたいのだ。
「あんまり考えすぎないほうがいいんじゃない? あの生徒たちはトイ先生の一存でどうにでもなるみたいだから……必ず、僕たちの選んだ方になるとも限らない」
「そう、ですね……」
腑に落ちたのか落ちていないのか、伏し目がちになった彼女は小さく頷いた。周囲のオツキミ種たちは僕とスピカを見比べている。
「じゃあ、僕はこれで……」
今度は引き止める声もなかった。すこし行ってから振り返ると彼女はその場にいた。きっとあの子も、姉さんのように優しいのだろう。
スピカ・ノクターンちゃん(@icgkkk)お借りしました