ばかみたいですねえ


問いかけ





「死にたくないじゃないですかぁ」
 甘ったるい声が耳に煩わしい。目の前に現れたその生徒は笑みを絶やさずこちらを見ている。
「僕も同感です」
「そうですよねぇ」
 本当は死にたいということは、もしかしたら彼女にはバレているのかもしれない。否、死にたくないという願望は間違っていないのだ。死にたくない。死にたくないけれど、僕はきっといつか死ななきゃいけなくなる。もうこれ以上どうにもならなくて、前にも後ろにも進めなくて、自分の感情に飲まれてしまうときが。自殺ができない血のせいでその悩みに永遠に取り憑かれて行く。
「ルーナさんは味方ですか」
「そりゃそうですよぉ」
「そうですよね」
 中身のない会話を続ける。腹のなかを探り合うような陰湿さが裏に見え隠れしていて、なんとも居心地が悪かった。彼女が本心から味方に投票したと言っているのかどうかも怪しい。別にまぁ、僕はどっちでもいいのだけれど。
「でも私ぃ、見ちゃったんですよぉ」
 瞳が合う。いたずらっぽく細まったその濃い桃色の奥底に光は見えなかった。人が多いここではっきりと投票先を述べて欲しくはなかった。いうな、と思いを込めて目を見つめていると、根負けしたように彼女は吹き出した。
「バカみたいですねぇ」
「ですね。……まぁ僕は、これで」
「逃げますかぁ」
 そもそもここで知り合っただけの生徒だ。どう思われていようがどう感じていようが僕には関係ない。誰とも深く関わる気は無い。僕の投票先を知られていようが知られていまいが、関係ないだろう。気にしない、気にしない。
「……逃げているのは、君の方では?」
 仕返しと言わんばかりに捨て台詞を吐いてその場をさった。らしくないことをしてしまって、ああ、なんだかすごく疲れた。どうだっていい、どうだっていいはずなのにな。

ルーナ・ルッチェ・ルッシェッロちゃん(@Na_zak1)お借りしました
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